第943話 悪徳神官2
「噂は本当だったんだ!俺の足が戻った!」
「はい、これからも順次まわって行きますからね。急ぎの人にはここに来てくださいね」
と、怪我で片足のひざ下を無くしていた男が回復魔法の効果に驚いているのに対して、孤児院を併設している新しい神殿の案内をする。
炊き出しをしながら、子供たちには孤児院へ入ることの説明、怪我人や病人には治療をして社会復帰の案内をしていく。
そのとき、炊き出しに並んでいたボロボロのローブをまとった男が、ナイフを持ちながら近くに居た子供を捕まえて叫ぶ。
「お前が新しい領主のサラって奴か?」
「そうだけど。子供は離してあげてよ。かわいそうに」
意味が分からず泣き出した子供のことだけを気にするサラの態度が挑発になる。
「うるさい!お前たち動くなよ。大人しくしろ!」
ナイフを振り上げた男は≪縮地≫で接近したハリーに早々に取り押さえられる。
「魔法を使うまでもない奴だな。ほらこっちに来い」
猿ぐつわをしてハリーが他所に連れて行くのに合わせてサラが子供を抱きしめて周りに聞こえるようにいう。
「ごめんなさいね、怖い思いをさせて。お詫びにこのお菓子をあげるね。今日ここにいる皆さんにはお詫びでお菓子をお配りしますね」
魔法の袋にいつも持っているサラの好きなお菓子を配りその場を治める。
「で、子供に刃をふるおうとするなんてどういうこと!」
炊き出しの場所から≪転移≫で犯人も連れて帰ったサラは≪支配≫で全てを吐かせる。≪支配≫された男は、スラム街の仲間、話を持って来た商会に、トリストフたちを案内し、そこで捕まった者をさらに≪支配≫することで、元の悪だくみの悪徳神官や悪徳商会が芋づる式に確保される。
「ま、サラ様の行いは、今まで荒稼ぎをしていた神官や商会の反感を買うとは思っていましたが、こんな行動に出るほど短絡的とは・・・」
「膿は少しずつ出していくしか無いね。それにしても馬鹿な奴だよ。子供を使おうなんて。ま、全員犯罪奴隷で売り飛ばして、神殿や商店は没収して有効活用すれば良いけどな」
「普通の悪者は犯罪奴隷にして代官地の護衛隊にして、あちらの護衛隊を玉突きで王都の本宅警備にするのですが、今回はサラ様の怒りを買ったので売るしかないですね」
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