第784話 辺境国終戦処理2

各国の軍勢を送還する際には、いったんアルメルス神国の首都ダラムの大通りをパレードし、広場にて教皇からこれまでの謝罪と今回の感謝の言葉を告げることになった。

教皇として精いっぱいの対応のつもりであり、国民にも各国のお陰で助かったこと、これからの質素な暮らしに移行することの意識づけのためでもある。

政治的なことは置いておいても、各国の将兵は自分たちが命を賭けて守った人々からの感謝を直接受けるのは誇らしいものであった。


サラの仲間たちもほとんどをコルマノン王国に送り返し、基本的には休息を取らせながら、交代で開拓地北部のダークエルフ村のまわりの石畳整備をさせることにした。ドラゴンのドンは、代官地北部の丘から魔の森の魔物を狩りに行けることに満足しているようであり、食事に関する問題は解決できているようである。


そして、各国でも残った外交専門の者たちの協議が継続している。

「少なくとも別の大陸である私たちは領土の割譲は求めません」

「ガーライト王国も、領土は貰わなくて良い。神国が余計なちょっかいをかけて来なくなれば、こちらから攻める必要もない」

「その辺りの謝罪、賠償も合わせて議論させてください」

「そうは言っても、被害を受けた村々への生活補償をしたらどのくらいの物が残るんだ?」

「首都ダラムから港町の外交経路での見栄のための宝飾品などを処分します。私を含めた教団幹部の私財も供出させます」

「あの連中が素直に応じると思えないがな」

「この機会に国家として再度生まれ変わらなければ。本当の意味での質素で心豊かな国を目指す原点に立ち返ります。そのための権限をふるった後は、教皇を退きます。教皇も世襲ではなく、数年ごとの選挙制にするつもりです」

「それは大変だ。その混乱で他国に迷惑をかけるなよ。その道筋が本当にできるまでは、引退に逃げるなよ」

ガーライト国王アルミーノが教皇にくぎを刺す。


原資の方針を踏まえて、各国への賠償、報酬の割り振りなどの議論が進む。その中で、どうしても簡単に決められなかったのがサラへの報酬である。戦闘力だけでなく、≪転移≫による軍勢や物資の輸送など、算定するための比較対象が過去にも無いためである。

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