第723話 首都ダラム

ここまで至高教団の教えが浸透していると、コルマノン王国の使節団とどこかの食堂などで合流するのは危険と思われたので、追加で手紙を差し入れると同時に姿を消した天使マルカルロを使って、使節団の宿所となっている屋敷に≪転移≫で合流することにした。


さすがにサラの仲間全員が≪転移≫で行くには多いと思われるので、サラ、ハリー、ティアーヌの3人のみで使節団と面談する。

「サラ・ドラセム伯爵、お久しぶりですね」

そこに居たのは、レーベルク帝国への終戦処理の使節団になっていたテオドナ・モンブリー法衣伯爵、クリミーユ・タンプ法衣子爵であった。難しい外交対応ができ、サラとも問題が無い人材であるので、選ばれたのであろう。


さっそくサラたちはガーライト王国からの経路で気付いた、質素、デメテル神殿のことを共有する。

「宰相の仰るように、我々、港町からこの首都までの間にそのようなことは認識できなかったですよ。張りぼてなのかもしれないですね」

「それに、冒険者の数が少なく南西方面に人を集めているという噂はまったく入手できませんでした。どこの街でも、至高教団の教えや神国はすばらしい、他国もそれを見習えば良いのに、という風潮ばかりで。もちろん使節団の私たちが行動できる範囲は街でも限られているので、そこだけ取り繕っていたのかもしれませんが」

「そこまで見栄を張ったり、意図的に情報を隠したり、南西には何があるのでしょうかね」

「私たちは、アルメルス神国の首脳陣、つまり教団幹部と外交交渉を行いますが、きっとのらりくらりされて実際に議論は進まない期間が続くと思われます。ドラセム伯爵たちはその南西の方に足を延ばされてみるのはいかがでしょうか」

「かしこまりました。ちなみに、アルメルス神国の南西側にどんな国があるかご存知でしょうか」

「私たち外交組織の情報でも、アルメルス神国の南西には国はなく、あくまでも神国の領土の先は辺境で魔物の領域であるとのことです。アルメルス神国は北部と西部が海、東部がガーライト王国、南部はほとんどが山に接しているはずです。私たちのユノワ大陸に比べてコリサ大陸はまだまだ魔物の領域が多いなか、アルメルス神国はその信仰の力で豊かな国を運営しているという情報のみでした」

「実際に行ってみるしかないですね」


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