第712話 ガーライト王国海賊
港町ラブリニーを出港してから2~3週間になった頃、経験のある船乗りたちの緊張がだんだんと高まってきている。
「この領域では、いつ海賊に襲われるか分からないからですよ」
訳を聞くと答える。
ガーライト王国の海軍は、他国への私掠を許された海賊でもあるからである。ただ、海賊に便利な速度の出せるガレー船は、波が高くなる外洋には不向きなため、できるだけコリサ大陸とは距離を開けて東進し、目的の港に近づいてから大陸に近づく方針とのこと。
アルメルス神国の北側の海には少なかった島々も、ガーライト王国の北部では増えてきて、島影からいつ海賊船が出てくるか、と危険度があがるらしい。
アルメルス神国からガーライト王国の北側に進んだあたりで、ミケラルド商会の船と鹵獲した元密航船それぞれには、ガーライト王国の許可を貰っている旨の旗をあげる。
しばらくする帆船3隻による船団が近づいてくる。中心の1隻が大きく、残り2隻はそれより小ぶりである。ある程度の距離で停船した後にボート一艘が近づいてくる。
「海軍です!」
と船乗りの緊張が高まる。
近づいてきたボートから、商船の方に3人が乗り込んでくる。
「我々はガーライト王国海軍である。検めさせて貰う」
「はい、我々はコルマノン王国とガーライト王国の間で商いをさせて頂いておりますミケラルド商会です。もう一隻は護衛です。こちらが許可証になります」
ミケラルド商会の商隊長が必要書類を提示するが、それを見ても3人は黙ったままである。
「これは失礼しました。お勤めお疲れ様です」
商隊長が貨幣を入れていると思われる小さな布袋を渡すと、黙って頷いてボートに戻り、そのボートで停船中の船に戻る。しばらくすると、その3隻も巡回に戻るのか、移動していく。
「あれって、暗黙で賄賂を要求した、ということですか?」
後で商隊長に聞くと、街の検問でも良くあることだという。
あまり納得できないが、そういう物かと認識していると、島々に近づく前に、もう2回、検査と称した賄賂要求の帆船船団と遭遇することになった。
相手から具体的に賄賂を要求されたわけでもなく武力行使をされたわけでもないので、撃退もできない非常に質の悪い海賊の一種である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます