第619話 ドワーフ村来賓

暴走と言っても良い速度の馬車が向かって行った先は、自分たちの目的地の村長宅の方であり、嫌な予感がした。村長宅に到着すると、残念ながら予感が正しく、その豪華な馬車が停まっており、皆がため息を漏らしてしまう。


いったん帰ろうか?と相談していたところ、

「また明日来るから、それまでには用意しておくように!」

と大きな声がした上で、玄関扉をバンと開けて出てきた者たちが馬車に乗り込んで、またすごい勢いで走り去っていった。


まぁ良いか、とこちらは丁寧に玄関扉をノックして村長宅に入る。

「これは、ドラセム様。ようこそいらっしゃいました。村民たちの治療など大変お世話になりありがとうございます。本日はいかがされたのでしょうか」

「はい、それよりも先ほどのは何事ですか?」

「ハハハ・・・この国の王子が我々の製品を気に入ってくださったようで、自分のための剣を鍛えるように依頼をされていったのです」

先ほど玄関を出てきた真中の着飾り太った若い男がそうだったのかと思い出しながらハリーが言う。

「態度はひどいけど、請けてやれば良いんじゃないの?」

「それが、頼まれたのがミスリル短剣でして」

「さすが王家。え?もしかして材料とか費用をケチられた?」

「いえ、それは無いのですが、魔石が足りないのです。ミスリルを鍛えるには通常以上の火力が必要なのですが、現代の我々では魔力が足らないので魔石で補っているのです。その魔石が今この村では不足気味でして。商人に聞いても一時的な不足なようなので、来月まで待って貰えれば、と申し上げてもどうしてもすぐにミスリル短剣が必要らしく、催促されているのです」

「サラ、何とかしてあげられないの?」

「Aランク魔物の魔石が必要なんですよ」

「魔力でも良いの?」

「え、もちろんいいですが」

「じゃあ一度見せて貰えますか?」

折角の機会なので王都のカーヤも転移で呼びに行って、どうも魔道具の一種らしいミスリル用の鍛冶設備に魔力を注入して、完成までを見学させて貰う。職人はカーヤの師匠になる人であった。

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