第584話 バッソ領3

視察官が到着するにはもう1週間ほどかかったが、増えた人手でそれまでにいくつか分かったことがある。


略奪して来た品々を港の倉庫経由で運び込む商船は毎回同じ船のようであり、バッソから南に向かい、南から帰ってくるため、時間的にも港町ラブリニーに運んでいるのではないかと思われた。

またその商船の乗組員も、海賊船の幹部っぽい人物も男爵屋敷に出入りしていることが確認できた。


水精霊シルビー経由での宰相と、バッソの宿屋で合流した視察官とにこれらの情報を伝える。

「バッソ男爵が関与していることはほぼ間違いないであろう。男爵屋敷から出てきた海賊船、商船それぞれの乗員を捕獲し、口を割らせろ。その情報を突き付けて男爵を拘束、王都へ連れてくるように」

という宰相の指示になった。

視察官は武官もそれなりに連れて来ていたが、戦力の意味ではサラたちにも協力依頼をされる。


まず倉庫から出てきた商船の乗員それぞれに対して尾行をつけて、男爵屋敷に入るまで追跡し、出てきた後は人通りの少ないところで馬車に連れ込み捕獲する。

男爵との関係を問いただすと、男爵の運営する商会の商船であることが判明する。また、想像通りバッソ港からラブリニー港に荷を運んでいることを再確認できた。この商船の乗員は、はっきりとは聞かされていなくても海賊船とのつながりはうっすらと気づいてはいたが男爵の指示には従えず、賃金も増えたので後ろめたくも運搬をしていたとのこと。


続いて狙うは海賊船幹部であるが、彼らは常に2人以上で行動している上に、商船員と違い軍人として戦闘力もあると思われるため注意を払う。

彼らも行動は夜間であったので、細道に入ったところで、自分たちは≪夜目≫をかけておきながら闇魔法≪夜霧≫で月明かりすら無くさせて意表を突いたところで、カモフラージュのために≪睡眠≫の短剣も使いながら、悪魔ストラデルと≪睡眠≫により行動力を奪った上で捕獲して馬車で運び出す。

彼らは単純には口を割らなかったが、こっそり≪魅了≫をかけることでアルテーラ王国の海軍であることまでは聞きだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る