第581話 待ち伏せ
港町ラブリニーの南東の岬にて、海賊船らしき船を待ち伏せするサラたち。
船の襲撃は夜間であることから、昼間は交代で休んでおき、夜に備える。着いたその日は何事も無かったが、2日目の夜、真っ黒な船が別の船を襲撃したのに気付く。襲われた船の火の手に気付いたので救援は難しいと諦めつつ、真っ黒な船の上空までサラとティアーヌは≪飛翔≫で飛ぶ。
前回、敵に≪火槍≫を使える者が居ることは確認されているので、警戒してかなり上空を移動して≪夜目≫で様子を見る。
風精霊ジョステルの力を借りつつ風魔法≪集音≫により敵船での会話を聞くが、撤収や拠点に戻ると言う指示の声のみで、相変わらず無駄口は無い。
サラは敵船の移動に合わせて上空で付いて行くことにする。ティアーヌを岬に残した4人に合流させて、陸の方でも一緒に追跡し続けさせる。互いの連絡のため、水精霊シルビーを≪召喚≫したまま会話し続ける。
ただ、陸の方では馬での移動が難しい岩場などもあり、都度迂回するので時間がかかり、ティアーヌだけは陸でも上空に、残りメンバがティアーヌからのシルビーによる伝言で最適ルートを選びながら後から付いて行くという、海上のサラと合計3組に分かれて追跡することになった。
東の空がうっすら白(しら)みかけてきて、そのまま上空を飛んでいても見つかるかもしれないと不安になりだしたころ、真っ黒な船は近くの港に向かいだす。見つからないようにさらに上空から確認していると、小さな港のうち一番沖まで伸びた突堤の先に停船する。
改めて≪集音≫で乗組員の声を集めていると、荷下ろしが終われば解散と言われた後は、だんだんと無駄口が聞こえだす。
「さぁ酒を飲みに行くぞ」
「もう明るいから、盛り上がらないんだけどな」
「じゃあお前はやめておくか?」
「そういう意味じゃないって」
「まぁ酒よりも女がなぁ。このコルマノンの女が、と言うより、朝から飲んでそれから娼館に行くのがなぁ。はやくアルテーラに帰りてぇな」
「そういうこと思っても言うなよ。みんな我慢しているんだから」
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