第560話 悪魔疑惑

扉が開いて、3人の使節団が中に入ってくる。3人ともゆったりした神官服であるが、先頭はかなり太った男性で、残るは病的に痩せた男性と若い女性であった。


謁見の間に入って来た途端に、痩せた男性が

「ここには悪魔が居る!」

と叫び出し、きょろきょろと周りを見渡した後、サラの方に向かって歩き出そうとする。


サラはいつものように悪魔ストラデルの短剣をドレスの下に忍ばせていたので、慌てて≪拡張≫指輪に魔剣をしまう。すると

「逃げたようだな」

と痩せた男性が言い、

「騒がせて失礼しました。しかし王城にまで悪魔が居るとは、やはり調査が必要そうですな」

と太った男性が言いながら前に進む。


国王の前にまで進んだ後、その太った男性が

「アルメルス神国の使節団長であるペネム・カプラーノです」

と名乗る。

「ようこそコルマノン王国へ。リチャード・ザール・コルマノンである」

と国王も答える。


「教皇からのお言葉を申し上げます。先日の、悪魔教団と手を結んだレーベルク帝国の侵略は誠にご愁傷様です。ただ、その際のコルマノン王国の対戦能力が従来にない程であったとのこと。異教の力を用いられたのではないかと懸念しております。この度はその調査をさせて頂きたくお伺いした次第です」

「ふむ。我が王国は神々に対して優劣をつけていない。調査に協力するつもりは無いが、王国内の視察遊覧を否定はしない。ゆっくりされよ」

と、気分を害しながらも外交遮断までは望まない国王は答える。


「本日は到着早々でお疲れでしょう。明日には閲兵式などもありますし、この後には歓迎の宴もご用意しておりますので、この辺で」

と宰相が場を納めて、使節団を退出させる。

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