第544話 王国魔術師団図書館

続いて、自学自習という魔術師団の図書館に案内をお願いする。もともとサラは魔導書を見たくて来たのもある。


案内されたのはそれほど大きくない部屋であった。魔術学校の図書館よりもかなり小さく、図書室という規模であった。

明らかに落胆した様子のサラをみて、団長レデリクスが補足する。

「初級以下の雑多な魔導書の蒐集は魔術学校に任せているから、数は多く無いが、上級以上の魔導書もそれなりにあるのだぞ。ただ、読み解ける者が少なくて宝の持ち腐れである実態ではあるが。それに王級以上や禁忌魔法は王城内の宝物庫にあるから、ここの書籍数は自然と少なくなる」

と適当な本棚から抜き出して示された魔導書は、確かに水魔法の上級≪氷壁≫であった。


「正直、成果も出せていないことから、国からの予算も少なく、他国への体面上で魔術師団を存続させて貰っている状況である。その限られた予算で少しずつ増やしてきた宝物である。触媒などの消耗品や人件費と違い後代に残せるものであるので、いたずらに弱小団員を増やすよりも注力するよう歴代団長からの引継ぎであった」


サラは許可を得て書庫を軽く見てまわると、自身の習得が弱い土・光・闇属性の棚もあり、土属性の上級魔法≪岩槍≫を見つける。他にも未習得魔法の魔導書がいくつもあると期待できる。

そこでサラは、

「お伝えした魔法習得方法のうち、費用がかかるであろう上級魔法スクロールをいくつか提供する代わりに、魔導書の貸し出しを許可して頂けないでしょうか」

「うーん、貸し出しは色々と難しいが、部屋内での閲覧ならば私の権限で許可できる」

となり、さっそく≪氷槍≫と≪火槍≫のスクロールを複数提供する。その代わりとして、まずはその≪岩槍≫の魔導書を、魔法訓練場で試させて貰うことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る