第523話 魔の森代官地

謁見が終わり、控室に戻るとヴァーヴ侯爵から

「ドラセム伯爵のお陰で侯爵に成れたようなものだ。感謝するぞ。しかしこれでそなたとの寄親寄子の関係も終わりだな」

と言われ、首をひねるサラ。

「なんだ、まだわかっていなかったのか。寄子は子爵以下の貴族が、寄親は伯爵以上の貴族がなるものであり、伯爵以上は国王直属、つまり伯爵以上の寄親は国王と理解すれば良い」

「不勉強で申し訳ありません」

「良い、ローデット、色々と教えてあげるようにな。ではわしはこれで」

と立ち去るヴァーヴ侯爵。


入れ替わりに官僚達が現れる。

「ドラセム伯爵、いくつかご説明させていただきます。まず領地が無いまま伯爵に陞爵(しょうしゃく)とのことであり、法衣伯爵になられました。ですので年金があり、法衣子爵はミスリル貨1枚でしたが法衣伯爵はミスリル貨3枚が毎年支給されます」

「また、ドラセム様が自由にして良い土地の範囲を指定されました。こちらになります」

と地図を渡される。王都から北部には草原を挟んで魔の森があるが、王都から東に延びる街道に向かって魔の森も南に迫って来ている。王都から北西の王都ダンジョンへの距離と同じぐらい、ちょうど馬車で1時間ぐらいの距離だけ、王都から東に進んだ先からは魔の森が街道近くに迫っている。

「領地ではありませんので税の徴収率等は自由に設定できませんが、開発をして村を作っても良いということになります。その場合、その村の領主はあくまでも王領のため王家になりますが、ドラセム様はほとんどの裁量がある代官のような位置づけになります。魔の森にいくらでも代官地を広げて良いということですが、魔物からの防衛はご自身でということですので国軍や衛兵は関与しません」

「何かご質問はありますか?」

というのでローデットが質問する。

「過去にこのような事例はあったのでしょうか」

「過去にはありません。魔物を自力で排除できる実力があると認められ、かつ代官地のようなものを与えられるだけの功績のある者が居なかったということになります」

「では、前例が無いため、不明点が出たときには都度協議させて頂くのでよろしいでしょうか」

「はい、そうなりますね」

ローデットが言質をとったところで、この話は終わりになる。

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