第500話 厭戦感創出

休戦中には、遺品を販売することだけでなく、帝国軍の負傷者に対しても有償で回復魔法をかけることにした。帝国軍は街道沿いには魔法使いを連れて来ていなかったため、膨大な負傷者に対して、回復薬などでは追いついていなかった。

サラの仲間たちで回復魔法が使える者が総出で、ほとんどはサラたちの攻撃魔法による怪我である1,000人単位の負傷者を治癒するのであった。微妙な顔で感謝もされつつ、サラたちの良い訓練になり、サラ・ミーナ・ティアーヌが指欠損程度は治せる≪上回復≫を習得、習熟出来ることになった。他の≪治癒≫レベルであったメンバも≪回復≫を使用可能になった。


怪我人も治し、遺品が売り切れていくころには、多くの帝国兵が死んだことの実感もあり、出だしから負け続け、起死回生の筏(いかだ)作戦も思ったほどの効果を出せず、龍の棲む山での奇襲が失敗したことも知れ渡り、十分に厭戦感が広まったことで、国境付近で休戦待機中の帝国軍の士気はもう皆無であった。


それと並行して王国軍は帝国内の情報を入手し、帝都がまだ籠城状態であることを知る。

王都とヴァーヴ伯爵に諸々を水精霊シルビーによる伝言で諸々の状況を報告していると、今の状況にしたことへの褒め言葉と共に、王国内の軍議の状況を伝えられる。


王国に攻め入られる危険が減ったのであれば帝国が自国内で戦力を減らすのを静観する第1案、帝国が弱った隙に今度は王国が領土を奪いに攻める第2案、領土を奪うほどでは無いが第1皇子派に恩を売るために第2皇子派に打撃を与えつつ帝都も救いに行く第3案などである。

前回と今回に武功を上げられなかった武闘派が推す第2案が有力で、第1案はほぼ無く、残りが第3案とのことである。


ヴァーヴ伯爵は第3案の方向ではあるが、この案では第1皇子が第2皇子を退けたとしても、帝国が王国に負い目を感じることになるため第1皇子は第1案を希望すると想定している。領土が隣接する立場としては不要な諍(いさか)いの種は残したくない思いもあるため、今の第1皇子の戦況を正しく把握するために、サラたちに帝都に行って欲しいと頼まれる。

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