第438話 付与魔法習得

本職の護衛隊が居るのと、王国内の街道であることから、特にサラたちが働くことなく順調に、ただ上品な馬車たちの移動であるので少しゆっくりと、まずはヴァーヴ伯爵領の領都サイユに向かう。

途中の野営も、宿場町での宿も、護衛隊や事務官たちがぬかりなく手配をしており、サラたちはついこの前までの自分たちだけの逆方向の移動のときとの違いに驚く。


つまるところ暇を持て余すサラたちは、訓練をすることにした。サラは馬車や宿の中では空間魔法≪拡張≫とカーラに貰った付与魔法の学習を、野営などで人と離れた場所に行けるときには≪消音≫をしながら≪霧氷≫≪爆炎≫の練習を行った。リリーは≪消音≫≪強風≫を、馬車に乗っていないミーナたちは≪灯り≫などの簡単な魔法で同時発動数を増やす訓練をして過ごした。


通常の馬車では1ヶ月、つまり5週間30日で到着するはずのサイユであるが、少しゆっくりのため6週間ほどで到着となった。

正使、副使ともそろってヴァーヴ伯爵に挨拶をし、サラは陞爵の報告も合わせて行う。その後は、2日だけ休憩で留まることになり、サラとハリーとリリーはそれぞれ師匠のところや両親のところに顔を出し、移動中にあったサラの誕生日祝いをハリーの実家で行う。


サラは水精霊シルビー経由でも伝えていたが、法衣子爵になったことの報告と≪拡張≫の練習を開始したことをエミリーに報告する。

≪拡張≫を有効に使うにはそれを物体に付与する必要があるので、その恒久的な付与魔法の基礎を横について指導して貰う。それが中級付与魔法の≪刻石≫であり、≪刻石≫とは別の刻みたい魔法陣を、基本的には小さな魔石に刻み、刻んだ魔石を対象物品に埋め込む魔法である。対象物品を十分に理解していないと成功しないため、自身が作成したものか、先に鑑定魔法などで鑑定しておく必要がある。

すでにカーラからの魔導書で事前学習していたこと、鑑定魔法も習熟していたことから、最後の仕上げとしての指導になる。

貨幣を入れるぐらいの小さな布袋に、小さな魔石を用意して≪拡張≫を実習してみると、2倍程度の大きさにすることができた。後はエミリーからのコツの伝授であるが、単に魔力を多く注ぎ込めば大容量になるわけでなく、異空間でのイメージも重要であり、数をこなして練習するしかないとのことであった。


2日目は皆で水精霊シルビーの祠に行くのと合わせて、1ヶ月ほどまともに魔法発動できない訓練でたまったうっぷんを晴らすように草原で練習するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る