第426話 王国軍軍議

サラたちの報告を受けた、ロワイヤンの街の代官ヴァレミ・グーモンスは考える。


サラたちが奪ってきた12日分の兵糧の次の補給が来る前に、帝国軍に撤退を決めさせないと延々と泥仕合が続くことになる。ただ、このまま撤退されても王国としては被害を受けただけで、撃退した名誉以外に得るものが無い。

一代官に過ぎない自分が外交交渉もできない。

早急に平原の王国軍との相談が必要である。


その旨をサラに相談し、代官1人を王国軍の陣地に連れて行って貰うことにする。

時間優先であり機動力が必要ながら護衛力が必要なため、サラとハリーの一段上級なバトルホースであるハンとコンに、ハリーが代官を2人乗りした3人のみで、街の西の森を駆け抜けることにする。

巡回している帝国軍と遭遇してもサラの魔法と、ハンとコンの脚力で、平原の王国軍に無事に到着できた。


到着早々に、軍議が開かれる。代官だけでなく、サラは副官扱いのハリーと共に参加する。

「つまり、帝国軍は追加兵糧が来るまでは、弱腰であると?」

「このまま撤退させても王国、ヴァーヴ伯爵家は損害のみである。いっそ反撃して帝国の領土を取るべきである」

「いや、今度はこちらの補給線に問題がでる。被害を受けた街や村の復旧を考えると賠償請求することで停戦するのが妥当であろう」

「その外交をまとめられるものは居るのか?」

「それはヴァーヴ伯爵家寄子貴族や応援貴族の我々より、ロワイヤンの街の代官殿がふさわしいのでは?」

「え?私ですか?」

「そうだな、それが良い。よろしくお願いいたしますよ」

「相手の兵糧が届く前、今これからでもが良いだろう」


サラとハリーは発言する機会も内容でも無かったが、恐ろしいやり取りと思うのであった。交渉が失敗したら代官のせいになるだけであり、戦果の上がっていない平原の王国軍から、戦果が集中している街の王国軍、代官への嫉妬もあるのかとも思われたからである。

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