第416話 逆兵糧攻め

帝国軍は多い兵数、またそれに合わせた軍馬たちを養うための兵糧は大量に必要であり、それなりに運び込んだ以外に、ロワイヤンの街の近くの村々から略奪も行っていた。しかし、最初の攻め込む速度を重視したため、持ち込みの量が少なく、順次帝国から追加で運び込まれているようであった。


帝国軍も街の北門を攻めるのは被害が多いと少し手控えているのか、遠巻きのままである。それを機会ととらえて、サラたちはまた城壁からそっと降りて東の森を進んでいる。もちろん近寄って来た戦馬バトルホースたちにまたがって、である。

ロワイヤンの街から森の中で約1日進み、野営のあと東に再度進みだしてすぐに、森林内の街道を通って東からくる荷馬車の一軍を見つける。10台の荷馬車と10頭の騎馬である。


折角の物資を燃やすのも勿体ないので、火魔法は使わないようにする。

サラと水精霊シルビーが≪氷結≫を騎兵に同時発動した後、御者の兵士などには投降を呼びかけて縛る。1万人の軍勢用にしては量が少ないと思ったが、3日分であるとのことであった。馬車そのものは魔法袋に入れるにして、捕まえた馬や兵士たちの扱いが悩ましい。


サラが≪浮遊≫で上空から見渡すと近くに砦がある。いったん捕まえた者たちを森に隠した後、見張りを残して砦に行ってみると、王国軍の砦であった。事情を説明して捕虜や馬を引き渡す。また、街の代官への連絡も相談すると、矢文で連絡を取れるとのことであったので、しばらく敵の荷馬車の捕獲をする旨を報告して貰う。


下手すると3日の待ち時間ができるため、暇な間に主にサラとリリーが敵の意図を議論する。

「そもそも、帝国軍の狙いは何だったのかな」

「え?侵略じゃないの?」

「1万人って中途半端よね。とても全面戦争の規模ではないし」

「どういうこと?」

「ロワイヤンの街だけが狙いだったのかも。私たちが街に物資を入れないと枯渇したはずだし、平原の王国軍も到着がもっと遅かったはずだよね」

「ロワイヤンの街を兵糧攻めで落として、国境線を移動させるぐらいが落し所だったと?」

「そう。その予定が狂って、自分たちの方が兵糧攻めされることに」

「逆兵糧攻めだね」

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