第305話 新年の集い

そして新年になり、いよいよヴァーヴ伯爵家での新年の集いの日になる。

不安がっているサラ、ハリー、リリーに対してエミリーは同行すると言ってくれる。もちろんそれなりの服装は収納に入れてあったようである。

頼んでいた馬車に乗り、伯爵家の屋敷に行く。さすがに多くの馬車が来て待たされる。ようやくたどり着いた受付で名乗り高級品武器の献上品を預け、待合スペースに移動して時間になるまでさらに待つ4人。


もともと知り合いが居るわけでもないし増やそうともしないサラに対して、まぁそれでも良いかと思って、失礼にならない程度の対応だけをサラに指導するエミリー。食べても良いと言ってあげても緊張して入らないというハリーとリリー。


序列も最後なので伯爵との挨拶も最後と割り切って、会場でも端の方にいた4人であるが、ゴーチャン・ルメジョン騎士爵が話しかけてくる。サラが叙爵のきっかけに王都に訪れたときの先導役である。

「ドラセム殿、新年おめでとう。元気かな?」

「ルメジョン様、新年おめでとうございます。ご無沙汰しております」

とサラは挨拶を返し、他の3人も頭を下げる。

「これはエミリー様、お越しになられていたのですね。伯爵にもご挨拶いただけますか?」

「いえ、私はサラの付き添いですので、ご辞退させて頂きます」

「それは伯爵も残念でしょうが、かしこまりました」

と、貴族でないエミリーではあるが伯爵領都の金級冒険者への扱いか、非常に丁寧な対応であった。


想定通り最後の挨拶を誘導され、

「ヴァーヴ卿、新年おめでとうございます。ご無沙汰して申し訳ありません」

「おめでとう。少し背も成長したようであるな。冒険を頑張っているようで何より。今年から魔術学校への入学、そちらも頑張るようにな。後で受け取るように」

と、羊皮紙をたくさんくれる。目をかけて貰えているということであろう。羊皮紙は地味だけど魔術学校に行くには一般的にはありがたいもののはずである。リリーやミーナが製作できるようにはなっているのだが。


大きなミスは無かったと安心して家に帰り、ようやくお腹すいたと食べる若い3人であった。

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