第272話 スラム街襲撃

女の子はスラム街に入った後しばらくすると、さらに細い横道に曲がる。

サラとリリーも曲がった途端に危険を感じたが、それと同時に前からと後ろから見るからに怪しい風体の男たちが、短剣や片手剣を手に道をふさぎにくる。


リリーが落ち着いて

「私たちに用ですか?人違いでは無いですか?」

と言ってみるものの、男たちの返事は無い。仕方ないので、腰袋からショートスピアを取り出すと、男たちも動揺するが、

「取り押さえろ」

と襲ってくる。


サラとリリーは魔物や本物の盗賊ともやり合える力があるが、あくまでも12歳ほどの小柄であり、街中であるので革鎧もつけず目立つ武器も魔法袋にしまっていたので、カモに見えたのかもしれない。

一応手加減の意味で、サラは≪氷刃≫の同時発動を、リリーは≪氷≫魔槍で、男たち3人の手足を切断しない程度に反撃をし、すぐに戦意喪失させる。3人の中には服屋の近くで女の子を蹴飛ばしていた黒フードの男もいた。

また3人の奥には、しゃがみこんでいる女の子も居る。


3人の男は後ろ手で親指を縛り付けてから≪治癒≫で回復させて、女の子はそのままでスラム街から連れ出す。当然野次馬が集まってくるので、衛兵を呼びに行くように言う。

女の子を含む4人を衛兵の詰め所に連れて行くのと合わせて、サラたちも事情説明のために付き添う。


詰め所では、サラたちは銀級冒険者の身分証明を提示し、スラム街で襲撃にあったのを撃退しただけの旨を説明する。その後、女の子のことは気になったので、男たちの事情聴取の結果を教えて貰う。

結果、女の子も仲間であったようである。高級服屋から出てくる令嬢とお付きの侍女見習いと思って襲ったらしい。確かにサラも魔法使いローブであり、リリーも弓や槍は魔法袋にしまってあり革鎧もない普段着であったから間違えるのもしかたない。

高級服屋の前でぶつかってみて人の好さそうなターゲットを見つけると、その人の好さに付け込んでスラム街まで誘導して強盗するという計画であったらしい。

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