第84話 複合魔法

3ヶ月という期限は失敗だったときの本人たちの心理的負担を軽減のためであり、上手く行っていたら自動延長でも良いと考えていた保護者達の思惑は3人には伝えていないことであり、手紙のやり取りも無かったのでそのまま帰宅となった。

ただ保護者達にしてみたら、いくらエミリーがこっそり状況把握していたとしても、やはり顔を見ることができてホッとできて良かったと考えるのであった。


そんな背景を知らない3人は、表現はそれぞれであるがしばらく保護者達に甘えることになった。


ハリーは両親に料理の成長度合いを披露しつつ、足りないところの指導を仰ぎ、さらに簡易に手に入る食材を利用してのレパートリーを広げるために色々なレシピを習う。

リリーは両親に契約を含めた商業的なことを習う。


サラは師匠エミリーに、街を出てから習得した≪集音≫≪火球≫≪氷刃≫≪火炎≫などを見せて成長度合いを披露する。


そして複合魔法について教えて貰う。ゲレの街の魔術師委員会では複合魔法を指導できる先輩は居なく、師匠エミリーに頼ることにしたのである。覚えたかった水魔法と火魔法の複合の≪熱湯≫や、火魔法と風魔法の複合の≪乾燥≫に挑戦していくためである。

これは魔力を2つの属性それぞれに変換して同時に各属性の機能を生み出すものであり、イメージするのも難しい。例えば≪熱湯≫の場合、水属性に変換した方は水生成しつつ、火属性に変換した方は過熱するのを同時に実施する必要があり、属性変換以降は並列思考が必要になる。


エミリーは≪熱湯≫≪乾燥≫それぞれを実演してイメージを見せつつ、まずは並列思考の指導をする。

右手と左手それぞれに≪水生成≫という同時魔法ができるようにし、次に右手は≪水生成≫と左手は≪種火≫という別属性を同時実現できるようにして、ようやく≪熱湯≫という3段階を踏むように指示する。


サラは両手それぞれに≪水生成≫から挑戦するも、右手もしくは左手の片手だけしか水が生成されない。エミリーはサラに、右手は三角、左手は四角を同時に空中に描く、続いて右手が四角で左手が三角、という訓練から始めさせる。

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