第10話 納品


調合、訓練の後、サラは商店街へお使いに出ている。


師匠が調合した傷回復薬等を店舗に納品するためである。回復効果が高い人気商品ではあるが、自身の店舗のみで販売をしていると人手がかかるため、他店舗に納品している。


サラが向かったのは、冒険者ギルドの近所の雑貨屋である。冒険者が必要とする武具、防具、道具や薬などを販売しているため、ある分野の品揃えは専門店に劣るが、色々な分野のものが一通り手に入るのが売りである。

店主は愛想の良い小太りの中年女性ウルであり、特に初心者にはお節介をするため、好かれもするが一部には苦手とされている。


そのウルに対して、サラはいつものように

「納品」

と言葉少なく、回復薬をカウンターの上にのせる。

「サラちゃん、いらっしゃい。ちょっと待ってね」

と言って、一つ一つ薬瓶を確認し

「さすがいつもの出来ね。合計5銀貨ね」

と銀貨を並べる。

「エミリーちゃんが良い物を安く納めてくれるから、皆に安く配れるのよ。お陰で領都での死者が大幅に減ったわ」

と、自分が可愛がる新人冒険者が元気に働く姿を思い浮かべている。


サラは長居すると構われるため早々に退散し、商店街を散策する。


昨夜も感じた短剣以外の武器の必要性から、まずは武器屋に足を運ぶ。ぶっきらぼうの店主であり声掛けも無いため、ゆっくり見ることができる。

ただ、実際に持ってみてもまだまだ非力であり、結局は短剣もしくは片手剣エリアの武器しか扱えないと再認識する。片手剣でも数の多いショートソードではまだ重く、軽量なものはレイピアのように突き刺す物が主流になるが、急所を刺すための精密操作するほどの力もない。

結局、今の短剣よりしっくり来るものが無いため購入せずに店を出た。


がっくりしながら、夕食の材料などを購入して帰宅した。

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