第2話 遭遇


薬草採取中に、何かの気配に気づいたサラ。

サラはまだ見習い。戦闘に使えるような魔法は習得しておらず、武器も採取ナイフ以外には、母の形見の1つの短剣のみ。大型動物や魔物にはとても敵わない。


この世界には、通常動物と異なる魔獣や魔物と呼ばれる存在がある。通常の動物が、過剰に魔素を吸収した際に変化するとも、魔素が溜まったところで自然発生するとも言われているが、解明はされていない。通常動物と明確に異なるのは、心臓付近に魔石と呼ばれる魔素の集積された赤紫色の宝石のような物が存在することである。この魔石は魔物の種類により色の濃さや形状が異なる。また、魔物は通常動物よりも人間に対して攻撃的であり、人間を見ると逃げるのではなくほぼ襲ってくる。魔法の使用可否に関わらず、人間は魔素を多く含むからとも言われているが、こちらも解明はされていない。


サラの家族は村の狩人であり察知能力も育てられ、通常の町の住民よりは気配を感じることができる。ただ、早めに気づくことはできても狩人の戦闘力までは無い。脳みそまで筋肉と言われるほどの父や兄たちとは逆に、頭を使う方が得意のため、村から街に出てきて魔女見習いになったのである。


たいした訓練もしたことがない短剣を握りしめ周りを見渡すと、しげみの揺れがほぼ無いことから、大型の動物もしくは魔物ではないと安心する。本来、危険が少ないところであるため師匠からも一人での採取指示があるのである。

良く通う採取地であり、仕込んでいた落とし穴の罠に誘導することにする。更なる小遣い稼ぎに、と考えたのである。狩人の家族に鍛えられた罠作成能力を用いて、あまり力を必要としない落とし穴を掘っていたので、ゆっくりその方向に移動を始める。


つまずきながら落とし穴まで誘い出す際に敵の姿を確認すると、サラの身長より長い蛇であった。姿の確認後は必死に走り、罠までたどり着くまでギリギリで追いつかれずに、落とし穴に蛇をはめることに成功した。

その後は、蔦を細工した輪で頭部を縛りつるし上げ、棒で叩いても死なないため短剣を何度も刺し何とかとどめをさした。


短剣で胸を開くと、指先ぐらいの小さな魔石が見つかり、魔物であることが確認できた。牙だけでなく皮や肉も素材とするため、背負袋に頭側から入れ、入りきらない尻尾側は首に巻くようにして帰ることにした。

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