腕試し<エキシビジョン>

101


とある場所…




「へぇ~…この子がナギ、ね?…可愛い顔してるじゃない…」



暖炉の火が揺らめく部屋。大きな鏡に映し出されている3人の新人ルーキー。その新人達が巨大な猪の様なモンスターと戦う光景を、まるでテレビのように鏡は映し続けている…。



『【ライトニング】!』


「!!…これがの能力…」



鏡の中では、少年が次々とジョブを切り替えながら戦う姿が映し出されている。



「!…この子、変身能力だけじゃないわね……」



鏡を食い入るように見つめる女性。その女性は恍惚こうこつとした表情を浮かべ…



「凄い…凄いわ!…ナギくん……アナタのこと…気に入ったわ!」



女性はツールボックスを開き操作し、一人のプレイヤーに発信。数秒の後、相手が応答する。



『…はい。どうされましたか?レイラ様』


「カイル…そのナギって子、狩ってはダメよ?」


『はい、畏まりました…それでは、如何いたしましょう?』


「一度戻りなさい…それから他の団員にもナギ君には手を出さないよう伝えて」


『畏まりました』



通信が切断され、部屋に沈黙が訪れる。



「はあぁっ!……アナタは私のものになる……それまでもう少し…遊びましょ、ナギくん♡」



妖艶な笑みを浮かべる女性は、頬を赤らめながら鏡に映る少年を見つめていた。





カルヴァス山…



「割とらくしょーだったな!」



ヤマノヌシを倒した俺達は、木陰でしばしの休息を取っていた。マイルの言う通り、思ったより早く片付いたな。現在全員レベルは26…レベルこそなかなか上がらなくなってきたが、着実に強くなっているのが実感出来る。


特にマイル…前衛職としてかなり頼もしい存在になった。ステータス上昇スキルで味方をサポートしつつ、しっかりと敵の攻撃を防いでくれる。近接の物理攻撃しか持っていないようなモンスターであれば、今の俺達なら完封出来るだろう。


ノノも二体の人形を操るようになり、攻撃力は以前の比ではない。【夜の徘徊者ナイトレイダー】の魔石を手に入れて、少しは二人に追いつけたかと思ったが…なんか、また差をつけられたように感じるなぁ…。まぁ弓での遠距離攻撃に、移動補助スキルを扱えるようになったのは、パーティ的には有益だったけど。



「どーする?飛翔石で帰るか?」


「…時間もまだ早いし、この辺を探索しながら帰ろうか」


「おっけい!」



時刻は15時前…ここから探索しながらのんびり帰っても、18時頃にはクランツへ戻れるだろう。



「んじゃ、出てくるモンスターを返り討ちにしながら帰りますか!!」



俺達は腰を上げ、帰路についた。






クランツ センターギルド地下…




「…よし、良いぞ。そのまま維持するんじゃ…」




目の前ではルルアが掌に大きな魔力球を作り出している。ワシの…このハリス=ウースラッドの目に狂いはなかったのぉ。この子…魔法適性だけではない。魔力の生成や操作をあっという間に、感覚的にやってのけおった。偉大な魔導士となれる素質…


明日には故郷に帰るために旅立つという……さみし…いやいや、残念じゃのぉ。せめて、もう二度と人攫ひとさらいなんぞに捕まらぬように、下級魔法くらいは教えておきたいが…



「よし…休んでよいぞ」


「ふー…」


「では次は、いよいよ魔法の発動じゃ…見ておれ…」



ルルアが興味津々な顔で見つめてくる…かわい…いやいや、勉強熱心で感心感心…。



「練り上げた魔力を、燃料じゃとイメージしろ…燃料が一気に燃え上がり、炎に変わるイメージじゃ…ふんっ!」



ワシは掌から火球を放つ!

炎は地面にぶつかり、小さな焚火のようにしばらく燃え上がり、消える。



「わーっ!すごい!!」


「今のが下級魔法のひとつ、【ファイア】じゃ…やってみるか?」


「うんっ!!」



ルルアが目を輝かせながら頷く。かわ…いやいや、可愛い……あ。



「では、ワシに向けて【ファイア】を撃ってみよ」


「え!?…危なくない?…」


「なに、心配するでない…ルルアはまだ魔法に慣れておらんからの。もし魔力の暴発などを起こした時にすぐに対処するためじゃ。気にせず全力で撃ってきなさい」


「……わかった!」



ルルアが掌をワシに向ける…さてさて、上手く発動するかのぉ?



「……おぉ!」



ルルアの掌に小さな炎が灯る。素晴らしい!初めてにして、魔法を発動させよった!!



「……お?ルルアよ、なんか…」



ルルアの掌の炎がみるみる大きくなっていく…あれ?これ?ちとデカすぎやせんかの?



「いくよ!?…ハリスさん!!」


「待っ…ル、ルルア!?」



え?いくの?…何処に?…コレを!?マズイ!!!



「【ファイア】!!!」


「え?…」



どごおおおおおおおん!!――



強烈な爆発音と共に、ワシは巨大な炎の塊に吞まれた…




「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!ハリスさあああああんっ!!」






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