奴隷〈スレイブ〉

66


「この…世界は…?」


「なーにブツブツ言ってやがるテメェ!?」


「意味が分からないっていったかぁ?…」



もし俺の仮説が正しければ…いや、だが…有り得るか?

俺は自分の導き出した考えに困惑する。鼓動が早くなっていく…。



「聞いてんのぉ!?」


「うっ!!!」


「ナギ!!」



ブレングスに再び足を矢で射抜かれてしまう。襲い来る激痛…

何をやっているんだ!考えるのは後だ!先ずはコイツらをなんとかしないと…



「ナギ!大丈夫か!?」


「あぁ…悪い。大丈夫だ」



俺は痛みに耐えながら立ち上がる。



「意味が分からないってのはぁ?コレを使ってる理由かぁ?…痛みを与えるだけで状態異常にもならない、ダメージも増えないアイテムを使う理由はなぁ…」



ブレングスが苦痛薬の瓶を手で玩びながら言う。



「ふん、直ぐに教えてやるさ…おい!お前!コイツらに回復魔法をかけろ!!」


「はい!ガザックさん!」


「「「!!?」」」



何を…言っている!?…


ガザックが離れて見ていた雑魚5人衆の生き残りに声をかける。魔法職であろうその男はニヤニヤと笑みを浮かべながら駆け寄ってくる。



「【ヒールライト】!」



男の持っていた杖から淡い光が放たれ、俺達を包み込む…。



「な、なんで…」



俺達のHPが回復。どういう…!!…そう…いう事か?…

頭によぎった考えに、俺は背筋が冷たくなる…コイツら!!!



「あ、ありが…とう?…」


「離れろおぉぉ!!ノノ!マイル!」


「もう遅ぇよ!!」



困惑していた俺達の隙を点かれた!俺とノノはブレングスの矢が…マイルはガザックの投げた投擲とうてき用ナイフが突き刺さる!!



「「うわあああぁぁぁあ!!!」」



襲ってきた痛みに苦しむ俺達…。コイツらの狙いは!…



「ヒャヒャ!…プレイヤーぶっ殺しても、魔石がドロップする確率は低いからなぁ!こうやって痛みを与えて調教するのよおぉ!!」



やはり!…



「ククク、俺達に抵抗する気力がなくなるまでいたぶってやるのさ!痛みを与え続け、精神を屈服させ、俺達への恐怖と俺達に逆らってはならないというイメージを植え付ける!!」


「ヒャヒャヒャ!!そうすれば、一度殺して魔石が出なくても、復活したら大人しく俺達の所に殺されにやってくる、家畜の出来上がりだぁぁぁ!」



倒れ伏す俺達を見下ろし、高笑いするガザック達。



「安心しろぉ?大人しく殺されに来るときは、薬は使わずやさぁぁしく殺してやる♪俺達は心優しいからなぁ!!それに、お目当ての魔石がドロップしたら自由の身になれる良心的なシステムだぜぇ!?」


「いや、お前らは俺に傷をつけたことを評価して、魔石の入手が完了した後も、俺の従順なとして面倒みてやるよ!!ハッハッハー!!!」


「…ゲス野郎が」


「あぁ!?」



マイルが立ち上がり、睨みつける。



「そういえばお前…オレ達とセンターギルドであった時に連れていたは、どうした?」


「あぁ?…あー、どうだったかな?イチイチ覚えてねえよ!の使い道なんて!!確か魔物の群れに囲まれたから、囮として餌になってもらったんだったかな?」


「ヒャヒャヒャ!!そりゃあ良いぃ話だあぁぁ!!」


「!…テメェら!!」

「殺す」


「…ノノ?」



目を見開き、光のない瞳をガザック達に向けるノノ。その目から伝わってくるのは…憎悪。



「お前達は…殺す…」



ノノが……キレた。



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