19



扉の先は迷路のようになっており、いくつか分かれ道や行き止まりにぶつかりながら戻ったり進んだりを繰り返す形となった。そして今、開けた場所にたどり着いたがそこには…



「…うわー、やべーなー…これどうにかなる?ナギ」


「レベル18、19…21…許容範囲外っ」


「二人とも静かに…」



赤い巨大なカマキリのようなモンスターが三体。注視するとブラッドマンティスという名前が表示された。そしてレベルは俺達の倍以上…うん、キツい。


俺達は通路の陰に隠れて開けた部屋の様子を伺っている。部屋の奥には更に通路が続いているようだが、この三体のカマキリーズに見つからずに通過するのは厳しいだろうな…。



「…引き返すか?」


「そうだな…別の道がないか探…」

「へっくちっ!」


「「!?」」



くしゃみをしたノノが『てへへ』と、照れ臭そうに笑っている。…いや笑っとる場合か。今ので気付かれてなければいいけ…ど…



「…あー、ダメじゃこりゃ、気付かれたぞよ、ナギ殿。あはは…どする?」



マイルが血の気の引いた笑みを向けてくる。人の丈の倍はあろうかという大きさの赤いカマキリが三匹、キシキシと不気味な声を出しながら鎌のような両手を掲げ、こちらを睨みつけている。あ、完全に臨戦態勢ですね、そうですよね、はい。



「……がれ…下がれぇ!!」



踵を返し来た道を戻る俺達。とにかく一度身を隠して…



「どうわぁぁぁぁぁっ!!速いぞアイツら!!」



俺達の後を追ってブラッドマンティスが通路を走ってくる。俺達との距離はみるみる縮まっていく。まずい!…このままだと追いつかれる!…



「ちょっ!ナギ!?」



不意に立ち止まった俺に二人は目を丸くする。ブラッドマンティスはすぐそこまで迫ってきている。俺はツールボックスを開き、アイテムウィンドウから火炎瓶を取り出す。右手が光を放ち、火炎瓶が出現し、手の中に納まる。使わせていただきます、冒険家ジョンさん!誰だか知らんけど!



「っ!!」



俺は火炎瓶をカマキリに投げつけた!



「ギシャアアアァァァァァァぁ!!」



瓶が割れると同時に、炎が一気に燃え上がり先頭のブラッドマンティスを包み込む。ブラッドマンティスは進行を止め、悶え苦しんでいる。



「今だ逃げろおぉぉぉ!!」



俺達は通路を疾駆し、迷路のように分岐した道を滅茶苦茶に走り回り、ブラッドマンティスから逃れた。






「ハー、ハー…なんとか逃げ切ったな…ジョン…様様だな」


「の、ノノ…心の臓がっ…口から出てきそう…」


「グロい…から…出さないでね…シンノゾウ」



走り抜け、息も絶え絶えな俺達は行き止まりに突き当たったところで腰を下ろす。冒険家ジョンが置いていったというアイテムが無ければやられてたな…。



「ふー…さてと、これからどうするよ?」



息を整え、マイルが立ち上がる。



「とりあえず別の道が無いか探してみよう…でも」


「でも?」


「…いや、なんでもない。先ずは探索してみよう」



俺はツールボックスからマップを開き確認しながら立ち上がる。どうやら一度通った場所はマッピングされるらしい。マップで見る限り、ブラッドマンティスが居た道以外でまだ通っていない分かれ道は二つ…この感じだと…


最悪、やり合うしかないか…



「…アレと」


「…なんか言った?」


「なんでもないよノノ、さ、行くか」



俺は赤い巨大カマキリの姿を思い浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る