17



時を少し遡り――――



「そっち行ったぞ!ナギ!」


「了解!」



平原オオカミと戦う三人の若者達。



「へぇ、駆け出しの割には良い動きをするなー」



それを”上空”から見下ろす一人の男。スラリとした長身に、真っ黒な髪。端正な顔立ちでいたずらっぽい笑みを浮かべる男が、紺のスウェットという何ともラフな格好で宙に”浮いて”いた。




「あ、詰んだ」


「ギシャアアアァァァァ」


「「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」




男の眼下では三人組がギガントワームに遭遇し、悲鳴を上げている。



「あーらら…さて、どーするルーキーズ?」


「「うわあああああぁぁぁぁああああぁああ!!!」」



ギガントワームの巣穴へと落ちていく三人。



「おいおいマジか、面白すぎるだろ」



男はケタケタと笑い、三人の後を追い巣穴へと突入する。



「スキル≪透過≫(ステルス)…発動♪」



男がそう呟くと、男の体はみるみる透過していき、その姿は視認出来なくなった。



「おぉー、生きてたよ」



穴の底で三人は巨大な人形をクッションにして落下の危機を脱していた。男は透明化状態のまま息を潜め、三人を観察する。


全員レベルは8、重装魔剣士に人形術師と…下級剣士?

さっきの戦い方、センスありそうだったけどな。というかランクEの下級剣士なんて逆にレアだな…



そんなことを男が考えていると、上からギガントワームが飛び降りてきた。

三人は追い立てられるようにダンジョンへと入っていく。獲物に逃げられた巨大芋虫は諦めたようにダンジョン入口から離れていく。



「しかし、こんなところにダンジョンがあるとはね。格上のモンスターに睨まれて、なんだかんだで生き延びてるし、隠しダンジョンは発見するし…アイツら運が良いんだか悪いんだか」



宙に浮いていた男はゆっくりと着地し、ダンジョンの入口へと歩を進める。



「ギシャアアアアァァァァ!」


「ん?」



不意にギガントワームが男へと襲い掛かる。しかし男は巨体の突進をひらりと躱す。



「んー?…あーそうか、お前は目もないし、獲物を視覚で認識するタイプではないんだな」



ギガントワームは透明化している男の居場所を正確に捉えているらしく、再び男に向かって跳びかかる。



「…邪魔」



男にほとんど所作はなかった。



だが次の瞬間には、ギガントワームは縦真っ二つに切り裂かれ、消滅する。



「…さてと、もう少しアイツらに付き合ってみますか」



男はニヤリと笑みを浮かべた。


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