世界樹の実と種で無敵【凶悪小人襲われても俺だけ大丈夫、かも?】

もるっさん

第1話 異世界へようこそ【無敵と完全回復で楽勝】

俺は 今日もいつもの道を歩いていつものように帰ろうとした。

すると ずくまっているお婆さんがいた。

「大丈夫ですか?」

声をかけた。

でも 話しかけても返事がない。

これはヤバイだろう。


「ふふふはぁぁぁ↑↑」

だけど お婆さんは急に笑い出した。

なんで笑っているのだろう?

こっちは心配しているのに、孤独で寂しいおばあちゃんなのだろうか?


「どうしてそんなに笑ってるの?」

理由を聞くとお婆さんは 起き上がり老人とは思えない鋭い目で俺の目の奥を見つめてきた。

そしてゆっくりとした口調で話し出す。


「お前さんは、人の心配の出来るいい人間なのに、、どうして、そんなに辛そうな顔をして生きておるのじゃ?」


突然何を言われたのかわからなかったが、お婆さんの言葉が少し心に刺さった。

実は 最近の俺は将来の事とか色々な不安を抱えている。

どんな不安かと聞かれても 

沢山ありすぎて答えられない。

でも今のままではいけないという漠然とした、そんな不安だった。


「優しいお方よ。このおばばに 少しだけ時間をくださらぬか?」


「ええ 少しくらいならいいですよ。夕飯をまだ食べていないのであまり付き合えませんけど」

「ひゃっひゃっひゃ(笑)」


お婆さんは 高笑いをすると背中にモゾモゾと手をやった。

何をしているのだろう?

背中がかゆいのだろうか?

モゾモゾ。。モゾモゾ・・ キラン☆


お婆さんは腰から鎌を取り出した

「ちょっ!!  ヤバイ ばばあーー 」

まずい まずいぞ 殺人鬼 ばばあだ! 鬼ばばあって物語に出てくるけど これは実写版の鬼ばばだ!

戦う? まさか、ばばあは年寄りだから動きが鈍いはず、鎌で切り付けられるなんて御免だし

逃げるなんて楽勝だろう!


逃げなきゃ・・・

でも

体が動かない・・。

何をしやがったんだ。ばばあ


「ひゃっひゃっひゃ(笑)」


ばばあは 不敵な笑みを浮かべた。

俺の体が動かないのは100% こいつのせいだ。

ばばあは 鎌を俺に振りかぶってきたが でも当たらなかった。

振りかぶったのはどうやら 俺の手前。

「スパーーー!!」

俺とばばあの間の空間だった。

空間は ガラスにヒビが入ったように避けた。

そして 俺はおかしな空間に吸い込まれた。


ここは・・どこだ。

ここは 草むらと近くには村が見える場所だった。


するとばばあが 話始めた。

「ここは 過去の地球じゃよ。ひゃっひゃっひゃ(笑)」


そういうと、ばばあは、村のほうを鎌で指示した。

のどかな農村の村だった。何の変哲もない農村だった。

よく見ると、、あれ? あれは俺じゃないか??

俺がいる。

何だかわからないけど 俺そっくりの人間がいて、

村の人たちと、楽しそうに焚火を囲んで食事を食べていた。

食べているものは貧層だけど 満足そうな顔をしているな。

美味しそうだし楽しそうだ。


ばばあは、また 鎌を振った。

「スパーーー!!」


そしてまた 景色が変わった。

今度は街になっていた。

何かの集会だろうか? 拳を突き上げてデモをしているようにも見えた。


「ここは 過去の街、資本主義が産声を上げている場所じゃよ、ひゃっひゃっひゃ(笑)」


ここにも俺のそっくりさんがいる。

活力にあふれているというか。。 平均寿命なんかは俺たちの時代のほうが長いだろうけど

俺とこのそっくりさんを 二人並べて「どっちが長生きしそうですか?」

と聞いたら過去のそっくりさんが選ばれるだろう。


ばばあは、また 鎌を振った。

「スパーーー!!」


またまた 景色が変わった。

今度は、、 現代なのか、、??

駅のベンチが見える。俺たちは空間の中にいて 窓から外を眺めているような感じになっていた。

そして やっぱり 俺のそっくりさんがいた。

疲労困憊な顔をして、グッタリしている。よく見れば俺以外の人たちもみんなグッタリしている。

グッタリしたり うずくまったり、活力を失った人たちばかりだ。


ばばあが ゆっくりと話し出した。

「それは 昨日のお主じゃよ。 やはり気づいておらなかったか・・。」


そんなはずはない。

俺がそんな顔をしているわけがない。 

辛いと言っても運動不足だし、あんな戦場を駆け抜けて疲弊した兵士みたいな顔をしているはずがない。

何かの詐欺だろうか?

「これは、なんなんだ。 ばばあぁ?」



「お主は・・お主は死んだのじゃよ・・ いや 死んだというのはおかしいか、、

資本主義に殺されたのじゃよ、

どこにも逃げ場のない人生で さぞ 辛かったじゃろう。。」


そんな話をされて初めは納得できなかったけど、

こんな神がかった力に持ち主は死神に間違いないだろう。

俺は しばらく話した。

そして、自分が過労死したことを納得して自分の死を受け入れた。

俺は どこへ行くのだろう?

死神が連れていく場所って、どこだろう?宗教にはうとかったので、今一、つわからない。

地獄へ連れていかれるのかと思ったけど

でも 死神からは逆にある仕事を頼まれた。

それは 命を奪わない代わりに、異世界に行って木の種を植えてほしいという簡単なお仕事だった。


変なおばあさんに話しかけたばっかりに、こんなことになってしまった。

でも 異世界に行く?やめとく?どっちにする??


ただ、死んでしまうのはいつでもできる。

それより 新しい世界を見てみたいと純粋に思ってしまった。

俺は死神に「世界樹の種」を渡された。

そして また 鎌でスパーっと空間が引き裂かれると俺は異世界へ飛ばされた。


異世界のスタートは 草原だった。

そして 遠くの山には村だろうか?風車が見えた。

ヨーロッパ風だった。ヨーロッパに行ったことがないから ファンタジーな街並みに憧れがあった。

村人や景色を早く見に行きたい。

走りだろうとした。

だけどポケットに入っていた種がゴツゴツと足に当たった。

死神に渡された「世界樹の種」だ。


「そうだ これを一つ植えてから行こう」


異世界には飛ばされてしまったけど 死なずに済んだわけだし、種植えくらいは付き合うか。


種は 水に沈めたように地面に波紋を起こして沈んでいった。

すると すぐに双葉の芽がでた。

おばあさんは 確か「世界樹の種」と言っていたので目が出るのが早かったのだろう。

さあ 早く村を目指すか!!

俺は 街に向かって走り出した。



「ガサガサガサ。 グオォォスーー!!」


走り出してしばらくすると 茂みがガサガサと揺れ出した。

野犬だろうか?これはまずい。

そう思ったら小人が出てきた。

70cmくらいの小人だ。でも 腕にはこん棒を持っていた。

子供サイズだし 全然怖くない。

と思ったら 一人現れた後から 二人三人・・・・五人と小人が増えていく。

現れ方もヌルヌル・スルスルと 茂みから出てきて、音もしないので気持ち悪い。

これは まずい気がする。


「じゃぁ またね!!」

俺は右手を上げて挨拶をすると 後ろに逃げ出そうと後づさりした。



「ぎゃがぁー! ドッカン!!」


こん棒を持った小人は 叫び出し、こちらに殴り掛かってきた。

素早い動きで飛び掛かって来て繰り出された一撃は 地面に当たったが

頭蓋骨を簡単に砕けるだろう威力で、振り回されていることが分かった。

走ってはいるが、足のつま先がしびれている。。。

何も考えられない・・


俺は 元来た道をひたすら走った。

でも 我に返ると 俺の走っている方向は村とは 逆の方向だ。

何やってるんだ!!


「ぎゃがぁー!」


叫び声が聞こえる。もう戻れない。

そして 俺は村から遠ざかっている。どんどん 生還ルートから離れて行っている。

何やってるんだ俺。。 



足がもつれた・・ 

考え事をしながら走ったので足を小石にひっかけて少しも連れてしまった。


「ボコん!! うっ あああああ」


小人のこん棒が俺に命中した。

ただ 痛みはない。

でも 体がメキっと音を立てたし、動きが鈍くなっている。

殴られた部分が自分の体じゃないみたいだ。

逃げなきゃ 殺される。。



でも 倒れこんでしまった場所から・・動けない・・


「バタン・・・ヴォォーーン」

倒れた瞬間 何かに包まれたような感触があった。


「ポカポカポカポカ」


なんだ もう 痛みを感じない。

俺は 殴られているのか??


目を開けると 怖い光景が広がっている。

小人が5匹で 俺にこん棒を振り回しているのだから 怖すぎるだろう。

でも さっき殴られた時とは全く違って メガホンで殴られているような威力だ。

まったく聞かないんですけどぉ~

なんだ こいつら やめてくれ!! ドン!!


「バシン!! ドッカン!!」


小人の攻撃を 払い除けようと手を伸ばすと、なんと 小人が遠くへ吹っ飛んでいった。

何だこれは? 

軽く力を加えただけなのに吹っ飛んでいったぞ!


格闘ゲームのように 2体の小人にパンチと蹴りを入れてみると・・

バドミントンの羽のように スッコン!! スッコン!!と飛んでいった。



なんで いきなり弱くなったのか?

違う、小人が吹き飛ばされたと言うことは、逆に俺が強くなったんだ。

でも どうして?

心当たりは さっき倒れたときの感触だ。

周りを見渡すと どうやら 走って、走りぬいた先にたどり着いた場所は

さっき 世界樹の種を植えた場所だったようだ。

そして 世界樹の芽は輝きを放っていた。


そうか 世界樹の木の周辺にいると無敵になれるんだ!!


無敵になった俺は 確認をするために ちょっとだけ 試しに外に出てみた。

数歩、世界樹から離れると、膜を抜けたような感覚がある。

やっぱりそうか 範囲がわかる。

ただ 出た事に後悔した。

うはぁ 体が重い。。下に引っ張られる力がすごい。

これが 重力なのか。

くらつきと強い重力を感じる。そうだ・・


「バシン!! ドッカン!!」


左腕が折れてしまった。

体が重くなって血の気が引いた感覚になり 動けなかった。

そう 俺の体は重症だったんだ。


そして気を取られている間に小人に殴られてしまった。

骨が折れるのって痛い。。

これは 激しく痛みを感じる。。、

くっ・・・・


俺は後ろに飛びのいて再び 世界樹のそばによると

力はすぐに戻った。

「骨折の恨みだぁ!!」

周り蹴りで 残りの小人を吹っ飛ばした。

こん棒は バッキリ折れて小人は遠くへ吹っ飛んでいった。



「はあはぁ。。」

息が切れた。

世界樹の芽のそばに寄って 呼吸を整えていると、

光の花粉のような粉が飛んできて世界樹の芽に吸い込まれていった。

すると 世界樹は芽から苗木へと成長して、その木に5つの実をつけた。

小人の数だけ実がなったようだ。


骨折した腕が痛い。。

でも それよりも口の中に血の味がして、喉がつまりそうでたまらなかった。

ツバも出ないし息が苦しい。

俺は 実った世界樹の実を一つ食べてのどを潤した。


でも のどが潤う以上だった。

体が気持ちよくなった。


すごく 気持ちいい。。

温かい。。 心が癒される。。 

温泉。。サウナ。。マッサージの全部を同時に味わったような心地よさだった。

意識も 高揚して天国に行けそうだ。。これって ヤバイ薬だったのか。。

・・・。

・・。

・。

「はぁ!!」

我に返った。 すると のどはスッキリして体の痛みも消えている。

「骨折が治っているぞ!!」


なんと 骨折までもが治っていた。そして 心が少し癒された気がした。

俺は 実をポケットに入れると さっき食べた実の種を数歩先の地面に埋めた。

すると 地面は波紋のように揺れて 世界樹の双葉の芽が出た。


「範囲が2倍に広くなったぞ。そうだ 範囲の事を陣地と呼ぶことにしよう」


範囲は一気に2倍になった。

おそらく人間は2人くらい眠れる大きさだろう。

2倍って響きはいいけど大したことないな。

でも 今みたいにつなげて範囲を広げてもいいし、

実は4つもあるから点々と陣地を設定してもいいかもしれない。

なんせ 陣地の中では俺は強くなるみたいだから 

なんとか 旨い植え方をして村までたどり着きたい。


さて どうしたものか?

しかし 悲鳴が聞こえた。


「きゃーー」


遠くに悲鳴が聞こえるが、あれは・・・。


赤いフードを被った女性が 道具袋を担いで走っていくのが見えた。

後ろからは あの小人が3人、女性を追いかけていく。

でも このままでは追いつかれてしまうだろう。

なんとか 助けることはできないだろうか?

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