前足
私の居場所は、ほんの一周ふらりと歩くと終わるけれど、いつも温かい。
ふかふかのベッドがあって、おいしいお水とおやつ。ここにはすべてがある。
時々、居場所の終わりの透明な壁が開くことがある。そういう時には、だいたい決まって、大きくて馬鹿な猫がつるつるとした前足にお水はおやつを乗せているのを私は知っている。
だけど、今日は乗せていない。
大きい猫の両方の前足がどんどん入ってきて、やがて私を挟んだ。
私の後ろ足が空中に浮かんで、怖いような気持ちがした。だけど、私が下ろされたところは温かかったので、不思議と喉の奥が鳴った。
見上げると、大きい猫がこちらを見て、目を逸らしたので私も逸らした。
たぶん、その猫のつるつるとした前足が私を挟み、悪くないような気がした。体に、たぶん、後ろ足に他の猫を乗せたりして、大きい猫は馬鹿だと思うけど、後ろ足の温かさも、前足に挟まれるのも、悪くはない感じがした。
四つの足で歩けばいいのに。
喉の奥が鳴る。
ここで眠るのもいいのかもしれない。
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