初恋観覧車
あろはそら
初恋観覧車 前編
「それじゃあ、
そういうと、
私と
遡ること1週間前。
香澄から「日曜日、遊園地に行かない?」と誘われた。
丁度スケジュールが空いていたため、OKし、他に誰が来るのか尋ねると
「佐伯くんも誘おうと思うんだけど〜」
と言ってニヤリと笑った。
そう。私、
口数は少なく、何を考えているのかわからず、謎めいている所があるけれど、私が落としたシャーペンを拾ってくれたり、背が足りなくて届かない黒板の上の方を消してくれたりと、さりげない行動に魅力を感じるようになった。
私の気持ちを知っている香澄は、この遊園地で私と佐伯くんをくっつかせようとしてくれているらしい。
それから1週間後、私を含めた女子3人と佐伯くんを含めた男子3人、計6人で遊園地へ向かった。
そして今に至る。
半ば強引に観覧車のゴンドラに押し込まれた私は、自分の置かれた状況に戸惑っていた。
こんな狭い空間に佐伯くんと2人きり。一体どうすれば……。
「あいつら、どこ行ったんだろうな」
「え?!」
いきなり話しかけてきた佐伯くんに思わず驚いてしまった。
「た、多分観覧車に乗るのが怖くなって、どこか別のアトラクションに行ったんじゃないかなぁ〜」
慌てて答えると、佐伯くんは「あぁ」と納得した顔をして
「コーショキョーフショーってやつか」
と言った。
「高所恐怖症ね」
と私が正すと「そう、それ」と言って遠くの景色を眺めた。
この観覧車はおよそ5分で頂上に着くらしい。
頂上まであと少し。その時、昔誰かから聞いた、観覧車のジンクスをふと思い出した。
「観覧車の頂上で手をつなぐと結ばれる」
そこはキスじゃないの?と思ったそこのあなた。いいんです。私が聞いたジンクスはこれだから。
そもそも、あくまで私は佐伯くんのことが「気になる」という程度でまだ「好き」って確定してるわけじゃないし……。
ていうか仮に手をつなごうとしても、佐伯くんの隣じゃなく、向き合う形でシートに座ってしまったから手をつなぐことができない。
アルプス一万尺でもすれば必然と手を触れることはできるけれど、いきなり観覧車の頂上で
「ねえ、アルプス一万尺しようよ」
なんて言ったもんなら「何この女」って不審に思われるだけだ。
緊張でおかしなことしか考えられなくなってしまった自分を「何考えてるんだ」と立て直す。
「お、そろそろ頂上じゃね」
佐伯くんに言われ、窓の外に目をやった瞬間「ガコン」という大きな音とともに、観覧車が停止した。
「え、何?!」
「わからない。故障か?」
すると園内アナウンスで、観覧車が誤作動で緊急停止してしまったと告げられた。私たちは普及するまでの間、観覧車の頂上で待機ということになる。
「まあ、1番いい場所で止まってくれたよな」
と佐伯くんは少し嬉しそうだった。私も
「そうだね!」
と窓の外を見た。西側は高層ビルが立ち並んでおり、東側は山の山頂がほぼ同じ目線にある。「すごい眺めだなぁ……」と見とれていると、ふと地上に目がいった。
メリーゴーランドにバイキング、ジェットコースターと数多くあるアトラクションが全て縮小化されたようだった。その周りをさらに小さい人々が、アリンコのようにぞろぞろと歩いている。
あれ……こんなに高かったっけ……。
背筋がぞくりとして、冷や汗をかいた。気を紛らわそうと他のことを考える。すると「おや?」と思った。
私たちは頂上に着いたまま、観覧車が止まってしまっている。これは……もしや神様が私に、佐伯くんと結ばれる運命を導いてくださっているのでは……?!学校のテストより頭をフル回転させる。
一刻も早く、ジンクスを実現させなければ!!でも、どうやって?!どうすれば佐伯くんと手をつなげられる??アルプス一万尺やっちゃう?!
「どうしたの、西野」
佐伯くんは不思議そうに私を見つめていた。
「なんかめっちゃソワソワしてるけど」
私は慌てて「なんでもないよ!!」と答えた。
「もしかして、西野もコーショキョーフショー?」
「ち、違うよ!!私は高所恐怖症なんかじゃ……」
そう言って思わず窓の外を見た瞬間、突如めまいと寒気に襲われ、一気に身体の力が抜けていった。
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