第9章 魅惑の4連休! 〜②1日目〜

7月22日。午前9時。

学校近くの喫茶店に3人はいた。

葵、アキ、副島(第6章参照)だ。

珍しい組み合わせである。


昨日の講座の終了後、玲が先陣をきって

「勉強会グループマニア」を作成し、

3人を参加させ、今日からの4連休を使って

勉強会を開こうと企画したのだった。

だが、肝心の幹事が来ないw


ちなみに部活はと言えば、この学校では生徒の夢実現・自己成熟を教育目標にしているため、自分のためになるような休みはOKなのだ。(強化クラブを除く)


「…遅いですね、古賀君。何かトラブルでも

あったのでしょうか。」

腕時計を見ながら心配する副島。

長針はじきに1を指すころだ。

下の名前は…なんだっけ? まあ、いいや。


「そうだね… 電話してみる?」

葵はそう答え、自分のスマホを取り出す。

普段は外では喋らないのだが、今は休日のモーニングで賑やかであり、また今いるメンバーは既に自分の声の特徴を知られているため、隠す必要がないのである。


「別にいいんじゃない?もうすぐ来るっしょ」

アキはジュルジュルとオレンジジュースを飲みながら、どこか不機嫌な感じでいう。

ついでにいうと葵はミルクティーを飲んでいて、副島はアイスコーヒーを飲んでいる。


「まあせっかくだしさ、取り敢えず今日は何やるか決めておきましょうか。待つ間暇ですし」

「そうですね、アキちゃんと副島くんは頭いいから先生側として教えて欲しいなぁ〜」

「私は理系は得意だけど文系苦手だから、

そこのところ教えて欲しい!」


などなど話が盛り上がって10分後ー

【悪い、遅れた】と外からガラス越しに、

口パクでそう伝えた玲が来たのであった。


飲食代は遅刻した罰として玲が支払った。




その喫茶店から自転車で約20分。

一向は古賀家、つまり玲の自宅前にいた。

白と紺を基調とした、新築住宅だ。


「…お前にしちゃ似合わねぇ家だな」

「あ"? 何か言ったか? 中村?」

「いいえ〜 何でもないですよ〜?^ ^」

「ア、アキちゃん落ち着いて…」


「………。」

何か喋れ、副島。


少しの間夫婦漫才((だれが夫婦じゃ!))を繰り広げた2人とともに、葵と副島も家の中に入っていった。


「「「おじゃましまーす」」」

玄関扉を開けると花の良い香りが…

ではなく、我々が普段から嗅ぎ慣れた匂いが。目の前にはゴーグル、マスク、手袋を身につけた玲が。


「はーい、検温するから並んでー」

玲は手慣れた様子で3名のおでこで検温する。

ちなみに段差があるため、身長の低めな玲でも難なく検温できる。


「凄いコロナ対策だね!私もやってみるよ!」葵は対策ぶりに頻りに感動している。


検温、マスクを捨てる、服にコロコロする、手洗いうがい、手指消毒、マスクをつけるという工程を全て終えた一向はいよいよ2階の玲の部屋の中に入った。


「うわーっ! 綺麗!」

「…似合わない」

「………。」


三者三様の反応を見せる葵たち。本当は葵と2人だけの勉強会といきたかった玲は苦笑しながら部屋の窓を開ける。まあ、これはこれでいっか。玲はそう思うことにした。


座卓を引っ張り出して、いざ勉強開始。

時刻は10時を指していた。


まずは数学。葵のたっての希望で、苦手克服をメインに。アキと葵、副島と玲の組み合わせで勉強に取り掛かる。


「なぁ〜次席ぃ〜、問3ってどーゆー意味ー?」ぐでーんとなりながら副島に聞く玲。

期末では数学はおろか全教科赤点を取り揃えており、数学はまだマシな方。それでも葵よりは下だ。


「それはですね、先程の問2で求めた値をxに代入するといいですよ」玲に教える副島は総合成績がクラス1位、学年2位の優秀な人物。

中間でも学年2位であったが、その頃から『次席じせき』という愛称で呼ばれている。本人曰く、次席と呼ばれることは事実からきているため受け入れてはいるが、早く1位をとって首席に改名したいとのこと。心は闘争心で燃え上がっている。頭は良いが驕らず、真面目で礼儀正しい性格で男女問わずに人気があるが、当の本人は人見知りだ。


「古賀。人にものを請うときは礼儀正しくしたらどうよ」玲を横目につっけんどんに言うアキ。今回も赤点は取らず、全教科70点から80点代をキープ。苦手な教科も得意な教科も特にない。先程から玲に対する態度が悪いのだが、何かあったのだろうか。副島が玲に聞くも「知らん」と言ったきり黙ってしまった。


「ア、アキちゃん。ちょっと外で話そ?」

葵がアキの手を引いて部屋を出て行く。


「ごめんね!すぐ戻るから!」

「お、おう…」「いってらっしゃい^ ^」


部屋には玲と副島が残された。

「…2人が戻るまで休憩しますか?」

「…そうだな。次席とも色々話したいし」

「分かりました。何話しますか?」

「とりあえず、敬語はなしで笑」

「わ…わ…、了解?」

「何で疑問形なんだよ笑 もっと気軽に言えよ笑」

愉しげな男子談話が始まったようだ。

どんどん仲良くなれよ!と買い物から帰宅した玲母は微笑んだ。


一方の葵とアキは玲母と1階のリビングにて遭遇し、玲母のご好意で用意された冷たい麦茶を飲みながら話をしていた。


「アキちゃん、古賀くんと何かあったの?」

不安げな様子で尋ねる葵。純粋に親友が何か困っているんじゃないかと心配しているようだ。


「何にもないと言えば嘘になる。古賀とは何もトラブってないから心配しないでいいよ」

好きな人に不安な気持ちにさせてしまった後悔と、この燻る想いにケリをつける覚悟を、アキは胸の内に秘めた。


この後2人は部屋に入り、アキが玲に謝罪し、

玲もアキに謝罪したあと、数学の続き、そして英語へと移り、午後6時ごろに解散した。











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