第7章 期末、夏季休暇、そして顕《あらわ》②

7月21日。夏季休暇開始。

そして- 夏季講習開始。


「なんでだよ!なんで夏休み初っ端から学校に来てんだよ!」


登校してきた葵が聞いた、本日のクラスメイトの第一声がそれだった。


(夏休みでも古賀くんに会えるし、勉強は嫌いじゃないから、私は嬉しいけどな)


そう思いながら葵は自分の席に着く。


(そういえば、この前の可愛い声(※前話参照)って古賀くんの声だったのかな。もしかして両声類とか?)


夏休みに入る直前に行った席替えで窓側の席をゲットした葵は外の景色を眺めながら思い返す。窓の外はいかにも夏らしい、綺麗な青空が広がっている。昨日の大雨のおかげかもしれない。


(私もあんな声出してみたいな…どうやって出すのだろう…)


葵の妄想は夏の入道雲のように膨らんでいく。ただ残念ながら玲は「カワボ男子」だ。


その玲と言えば…寝ていた。

昨日の深夜、ネット上で友人たちと戦略RPGゲーム「航海迷宮」をしていて睡眠不足になっただろう。教室内を見渡すと同じような者がチラホラ。


朝のHRまでまだ時間はあるし、

私も少し寝ることにしよう。

それでは。




ー約4時間後。

初日の3コマ全てを終えた高校生たちが、

バラバラと下校する。


部活のある者は16時から活動開始ということで、各自持ってきたお昼を食べたり着替えたり。居残りをして勉強している者もちらほら。


サッカー部に所属している玲は、他の1年生とともに1年2組の教室に居た。部室は3年生が使うため、1年生と2年生は空き教室で準備をしているのだ。ちなみに何故2組の教室かというと、サッカー部の1年部員が多く在籍しているからだそう。


葵の親友のアキと言えば、その身体能力の高さがクラスメイトから彼らの所属する部活動生に伝わり、特に部員数が少なく1人でも怪我をすれば出場辞退せざるを得なかった女子バレー部からの懇願を受けて、現在助っ人として参加。体育の時しかやらなかったからと謙遜していた割には上手い。顧問の先生がしきりに入部を勧めるのも分かる気がする。


葵はアキの部活終了まで勉強しようと図書室に居た。5組の教室にいたらグラウンドが丸見えで勉強に集中できなくなると判断したからである。一方図書室は教室とは別の北校舎にあり、グラウンドは隣にある南校舎のせいで見えない。葵にしてみればいい自習室だ。


勉強している科目は…数学のようだ。唯一赤点科目であった数学の『宿題』を解いている。この『宿題』は今日の講習が終わったあとにアキから出されており、その内容は葵が苦手とする項目ばかり。アキよ、お前は葵の家庭教師なのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る