ポケット文庫

花沢祐介

川と語らう

 川を眺めていると

 彼らは私に話しかけてくる。


「明日のテレビ、予約した?」

「あの子は今、何をしてるの?」


 私は適当に答える。


「してないよ。だって見る時間がないんだもの」

「わからない。だってしばらく話してないんだもの」


 彼らはとても無邪気だ。


「なんで? なんで見る時間がないの?」

「どうして? どうしてお話ししてないの?」


「私にもわからないの」


 すると、いつの間にか

 隣に腰を下ろしていた大鷲が


「それが人間なのさ」


 と、頷きながら答えたのでした。


 大鷲は上品なシルクハットを被り直すと

 その大きな翼を広げて


 どこまでも、どこまでも

 青い空めがけて飛んでゆくのでした。

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