地下通路

犬屋小烏本部

第1話七不思議と迷惑な先輩

私の町にはね。七不思議っていうのがあるんだ。

一つは小学校にある「桜の切り株」。

一つは町をぐるりと廻るバスの「停留所」。

一つは池に沈んでいる「砂時計」。

そして、今から話すのが四つ目。


君はたどり着けるかな?






『地下通路』







これは私が高校生の頃。

部活動が忙しくて、勉強もやらなくちゃいけなくて、友人とも遊びたくて、好きなこともしたくて。もう、何一つ満足に時間も体力も使うことができなくって、焦りばかりが溜まっていく毎日だった。

そして、更に私を追い込む原因があった。

それは部活の先輩。やけに私に絡んできていた。

俗に言う「チャラ男」というもので、周りからも余り好かれていない人だった。物凄く迷惑で、一日のストレスのほとんどをその人が生産していた。物凄く迷惑だった。


それ以外は普通に高校生活を楽しんでいた私。

物凄く迷惑な先輩以外は、友人のみんなはいい人たち。


いつからだったかな?

あまりに迷惑すぎて、無視するようになったんだ。そうしたらその先輩、私をストーカーするようになっちゃったの。迷惑過ぎる。

家まで見つかっちゃって、登校も下校もその人の視線がビシビシ感じてた。

だから、鉢合わせしないように毎回帰り道を変えたの。朝は仕方ないから両親に送ってもらってた。

これが、私と七不思議の一つを結びつけたの。

「帰り道を毎回変える」っていうことが。


私たちの町にある七不思議は、大体何かの条件を満たせば誰だって経験できるもの。

ただ、四つ目だけは違っていて完全に運任せ。

七不思議、その四つ目は「町のどこかに長い地下通路が現れる」らしいということ。

らしい、というのは目撃談がないから。

どれくらい長いのかもわからない地下通路。そこから帰ってきた人はいないんだって。


つまり、その地下通路はあったりなかったり。

いつも通る道がその地下通路になっていたりすることだって有り得る。ただし、それがどこに現れるのかはわからない。


そんな七不思議だった。

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