チキュウという星のニホンジン

すでおに

チキュウという星のニホンジン

 太陽からK88方位に54723ピヌット離れたGKTRU922地区に、惑星『ムクラヌバチートペペ』があった。『ムクラヌバチートペペ』の『クサンルージンユテア群』の首都『オルルテッデイムチオ』にある『ケッサシリテクルチチ研究所』は異星の生命体の研究を主としていた。


 空間を自由に行き来できる『ホリフレテッスインザ』に乗って遠く離れた星の生命体を捕獲し『ケッサシリテクルチチ研究所』内の『ドレデンドレドゥン』に収容し、生態を観察するのである。


 今また『ドレデンドレドゥン』に新たに捕獲された生命体が運び込まれた。


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「『チギュウ』という星の生命体だったかな」

 捕獲した生命体を正面に見据えて、『ケッサシリテクルチチ研究所』のフバユジデッソジリチコヌヘサニクデ所長が訊ねた。無論、間に『ピピレベジ』を挟んでいるから向こうからこちら側は見えない。


「『チキュウ』です。太陽系の『チキュウ』という惑星の『アジア』という地区で捕獲した『ニホンジン』という生命体です」

 助手のロロボシッルケキデレメサロも『ピピレベジ』越しにその生命体を見据えて答えた。


「『ニホンジン』か。それで、いまはどういう状態かね?」


「『ハラが減った。メシをくれ』と訴えています」


「『メシ』とは何かね?」


「『チキュウ』に存在する『コメ』を『ニタモノ』のことを言っているようです。『チキュウ』の生命体は『クチ』という器官から栄養を取り込まなければ生命を維持できないようです」


「不便だな」


「まったくです。それでどうしましょうか?」


「絶命されたら厄介だ。『メシ』を与えたまえ」


「承知しました」


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「『ニホンジン』の様子はどうだね?」

 フバユジデッソジリチコヌヘサニクデ所長が助手のロロボシッルケキデレメサロに訊ねた。

 

「要求通り『メシ』を与えました」

 『ケッサシリテクルチチ研究所』には、データを入力すればあらゆる物が瞬時に作成される『オケンロービ』があった。


「反応は?」


「それが、最初のうちは喜んで『メシ』に食らい付いていたのですが、しばらくすると食べなくなりました」


「ん?・・・どうしてだ?」


「『ウマイモノ』が食べたいと申しております」


「『ウマイモノ』とは何かね?」


「『クチ』にある『シタ』という器官が判断する好ましいもののことのようです」


「好みに合うのが『ウマイモノ』ということか」


「『ニホンジン』は『スシ』や『テンプラ』というものを好むようです」


「ならばそれを与えたまえ」


「承知しました」


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「『ニホンジン』の様子はどうだね?」

 フバユジデッソジリチコヌヘサニクデ所長が助手に訊ねた。


「『スシ』や『テンプラ』もだんだんと食べなくなりました」


「どういうことだ?」


「『ニホンジン』は『スシ』『テンプラ』だけでなく『ラーメン』『ハンバーグ』『カレーライス』といったものも好むようです」


「それならばそれらを与えたまえ」


「そうおっしゃると思いまして、すでに与えております」


「それで『ニホンジン』の反応は?」


「『ショクゴノデザート』が欲しいと申しております」


「『ショクゴノデザート』?」


「『トウブン』が豊富に含まれる『アマイモノ』のことで『ウマイモノ』とは『ベツバラ』とのことです」


「『ウマイモノ』だけでは足りぬのか。まあよい。それも与えてやりたまえ」


「承知しました」


 ※ ※ ※


「どうだね?『ニホンジン』は『ショクゴノデザート』を喜んでいるかね」

 所長が助手のロロボシッルケキデレメサロに訊ねた。


「最初はむさぼりついていたのですが手を付けなくなりました」


「またか。一体どういうことだ?」


「『カロリー』を控えるとのことです」


「『カロリー』?」


「『ショクゴノデザート』は『カロリーガタカイ』そうです」


「むさぼりついていたものを止めるとは、『カロリー』とはそれほどやっかいなものなのか?」


「そのようですね。代わりに『ヤサイ』をくれといってきています」


「『ヤサイ』?『ショクゴノデザート』の次は『ヤサイ』か」


「『ヤサイ』には『ビタミン』が豊富に含まれているそうです」


「この前は『トウブン』で今度は『ビタミン』か。必要ならば与えるしかないな」


「承知しました」


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「どうだね?『ニホンジン』は『ヤサイ』に満足しているかね」

 所長が助手に訊ねた。


「それが、『サンチ』を知りたいと申しています」


「ん?『サンチ』とは何だ?」


「『ヤサイ』を収穫した場所のことのようです」


「なぜそんなことを気にするのだ?あの『ニホンジン』は研究者なのか?」


「そういった情報はデータに記載がありませんでしたが」


「ならばなぜ『サンチ』を気にするのだ」


「『コクサン』がいいと申しています」


「『コクサン』?なんだね?」


「『ニホン』で生産したもののようです。それが『アンシン』だそうです」


「なぜだ?」


「『コクサンハアンシン』だそうです」


「答えになっていないではないか」


「呪文のように『コクサンハアンシン』と繰り返しています」


「すべて『コクサン』だと騙っておけばよい」


「承知しました」


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「それで『ニホンジン』の様子は?」


「『コクサン』だと伝えたら『アンシン』したのですが・・・」


「まだなにかあるのか?」


「『セイサンシャ』を知りたいそうです」


「『セイサンシャ』?」


「『ヤサイ』を収穫した生命体のことのようです」


「それを知ってどうするのだ」


「その方が『アンシン』だそうです」


「また『アンシン』か。どこまで『アンシン』を求めるのだ」


「我々には理解できません」


「『セイサンシャ』を教えたところで、真贋の見分けがつくのかね?」


「そこまで知能が発達しているようには見えませんが」


「ならば適当にあしらっておけばよろしい」


「承知しました」


 ※ ※ ※  ※ ※ ※


「その後どうだね『ニホンジン』は?」


「『セイサンシャ』は信用しましたが・・、不可解なことに『テンプラ』のコートを残すようになりました」


「どういうことだ?」


「以前は『テンプラ』は丸ごと食べていたのですが、コートを脱がせるようになったのです。それだけではありませんで、『スシ』の下の『シャリ』まで残すようになりました」


「なぜなんだ?」


「『トウシツセイゲン』だそうです」


「『トウシツセイゲン』?」


「他にも『ショウミキゲン』を守ってくれとか、『エンブン』は控えめにとか、中まで『カネツ』してくれとか、『ニホンジン』は細かく注文をつけてきましたので」


「やっかいな生物だ。『トウシツセイゲン』の次は何を欲するのか」


「読めませんが、今までの傾向から何かしらまた新しい要求が生まれるのは間違いありません」


「まったく『ニホンジン』の欲は尽きるところがないな。『足るを知る』を教えてやりたいものだ」

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