灯火

惑火

プロローグ


ありがとうございました、またのご利用をお待ち


しております。


偽物の笑顔を貼り付けて、今回の客に愛想良く挨


拶をする。


これが僕の日常。


客が見えなくなったところで、笑顔を消し、


先程手渡された札束に目を落とす。


いつからこんな汚い人間になったんだろう。


汚い人間を軽蔑していた筈なのに、


いつの間にか自分もそうなっていた。


世界は広いとよく耳にするが、そうは思わない。


夕焼けの空を見て、綺麗だと言える人が羨まし


い。


僕の目に映るものは、汚い人間たちの、醜悪な


にやけ面だけだ。


吐き気がする。


何もかも放り出して、ここではないどこか、誰と


も関わり合わなくてもいい、広い世界に逃げてし


まいたい。


そうすれば、世界の広さや、空の美しさを理解出


来るかもしれないのになぁ...

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