320 見て②
ひじかけに頬杖をついたリンは徐々に目を見開いていった。ヨワがふとローブに手をかけたと思ったらボタンを外しはじめたからだ。
「ちょお! ちょ、ちょ!」
思わず腰を上げたリンの体が動かなくなる。ヨワの魔法だ。そのままふわりとソファーに戻された。
「なにする気だヨワ!」
「あのね、リンにちょっと見て欲しくて」
「ここじゃなくてもいいだろ、って、待て待て!」
構わずどんどんボタンを外していくヨワに、リンは顔を覆った。ついにローブが床に落ちる音がする。それはかすかに音楽が流れてくるだけの部屋に大きく響いた。
「リン。目を開けて。見てよ」
「いや、でも」
そっと温もりが手に触れた。
「だいじょうぶだから」
いつも以上に熱く感じるそれに自制を溶かされて、リンはそろそろと手を開いた。指の隙間から見たヨワは想像していたようなあられもない姿ではなかった。
薄桃色の生地が吸いつくように肌を覆っている。締まった腰から足元にかけては花弁のように裾が花開いている。アクセントにワインレッド色のリボンが首と腰と両肩を彩る。胸元から首筋、肩から指先まで、余すところなくレースに包まれたあまり見かけないデザインのドレスだ。
ヨワは裾を摘まみ、軽く広げた。胸元に手を添えてうつむく。
「これが今の私の精一杯。みんなと同じようなおしゃれはまだできないけど……」
困ったように微笑むヨワから視線を逸らせない。どんどんと視界が絞られてヨワを近くに感じる。
ひざに触れられて驚いた。いつの間にかヨワが足元にしゃがんでいた。歩み寄ってくる刹那の記憶がなかった。
「私、リンにだけは見せられるよ。ううん。リンだけに見て欲しい」
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