289 浮遊の魔法使いヨワ 終

「つまり、ヨワはこの国の姫君だと……」

「あ」


 まぬけな声を上げてススタケの歩みが止まった。ヨワと手を繋いでいたリンも目をまるくして固まった。祖母は「おお」と感嘆をもらし叔母も「まあ」とそれぞれ驚いた反応を見せる中、ミギリはむせて咳をした。


「私の娘がお姫様……」


 シトネにいたっては頬をバラ色に染めて笑っている。


「やべ。俺、ヨワと結婚できないかも。ていうか首をはねられる?」


 みるみる青ざめていくリンの様子は、もう結婚まで考えてくれているんだと喜ぶ場合ではなかった。ヨワは軽く手を引き寄せてリンの目をつまらない問題から奪った。


「だいじょうぶ。私はこれからもただの浮遊の魔法使いヨワだから」


 外はまぶしいほどの輝きに満ちていた。





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