288 かけ替えのない人②
「好きだ、ヨワ。お前のことがまるごと好きなんだ。いっしょにその病と向き合っていこう」
「まるごと、いっしょに?」
ヨワは自分を包み込む温もりと張り裂けそうな胸に戸惑いながら、リンの肩にしがみついた。
「私、その言葉がずっと欲しかった」
私の醜い姿から目をそらさないで。薬をぬっても治らない心のひび割れに寄り添って。手を、握っていて。どうか。お父さん。お母さん。誰か、どうか。
「好きだよ。ヨワ」
「信じるよ、リン。なにがあっても、いつまでも」
この世界で誰よりもやさしい眼差しを向けてくれるリンの目と見つめ合い、ヨワは彼の肩に頬をすり寄せた。
「あ……」
硬い感触がやわらかくなった。驚いてヨワは自分の頬に触れた。そこは濡れていた。よく見るとリンは肩に怪我をしていて、流れた血が服に染み込んでいた。
「ヨワ、鱗がきれいに取れてる」
血のついたリンの手になでられると鱗はポロポロこぼれ落ちた。
「どうして」
「俺の血……。体を活性化させる――」
『魔法の名残!』
ヨワとリンは同時に声を上げて互いの体をきつく抱き締め合った。
「なあヨワ。俺たち今欠けていたものがやっとはまって歩き出したと思わないか?」
肩に響き耳に吹き込まれるリンの声は震えて聞こえた。ヨワは涙に身を熱くしながら何度もうなずいた。いつまでも補い合える存在でありたい。リンを支えるためなら、その努力をもう諦めたりしない。迷わず彼の隣を目指す。
ほっと安心したように息をついて額をすり寄せたリンの胸に沈みながら、ヨワは彼の背中でそっと希望を握り締めた。
「でも、あなたがヨワの本当の父親なら、そういうことですよね?」
コリコの庭を抜けて外に出ようとした時、叔父が言いにくそうにススタケを見た。問われた本人はきょとんとして首をかしげた。
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