285 生きたい②
「い、やだ……諦めたくないよお……もう、なにも諦めたくない……! 生きて、みんなで、家族になりたい……」
決壊したように涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。ああ、もったいない。泣く力があるならコリコを支える力に変えなければいけないのに。そう思っても涙は止まらなかった。頬の湿疹にしみて痛かった。
たすけて。リン。
リン。リン。あいたいよ。
『来るよ。行くよ。さあもうすぐ。足を伸ばして。あの子が落ちないように』
コリコが歌うように口ずさむ声が聞こえて、ヨワは無理にも口を閉ざした。耳を澄ませて“声”に集中する。
「ヨワー!」
聞こえた。
「ヨワー!」
ススタケと浮遊の魔法使いたちも反応した。まだ遠いが上から声が降ってくる。あれは紛れもなくリンの声だ。
ヨワも応えようとして息を吸い込んだ。しかしむせて咳き込む。ススタケに慌てて背中をなだめられながら、今度こそゆっくり息を吸った。
「リン!」
思ったほど大きな声が出ない。それでもヨワは希望の名前を呼びつづけた。
「リン!」
「ヨワ!」
はしごからひらりと飛び下りてついにリンの姿がクリスタルの間に現れた。彼は大きく息を弾ませて麻袋を胸にしっかりと抱き締めている。
「クリスタルは!? 他のみんなはどうした!」
「父さんたちはまだカカペト山に。きっと無事です」
駆け寄ったススタケにリンは袋の口を縛った縄を剣で切って、クリスタルを掲げてみせた。
「早くそれを台座へ!」
木の根に抱かれたうろの台座へリンは進み出た。見上げていたヨワとリンの視線が絡む。だがとっさにヨワはうつむいて顔を隠した。自分でもなにをやっているんだと思ったあとで、喜びのあまり忘れていたことを思い出した。
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