278 クリスタル奪還!③
いつ眠りから覚めるとも知れないコリコのクリスタルに頼るしかないのか。浮遊の魔法使いたちの魔力がそれまでもつとは思えなかった。国民のほとんどは避難を終えただろうが、今も巨樹を支えている彼らはどうなる。ヨワはどうなる。
「ヨワは、俺を信じて待ってるんだぞ!」
絶望と無力な自分への怒りが盗賊に向かう。リンは剣を握り締め、父と兄の戦いに加わろうと駆け出した。
「青い光……。今、青い光が見えた!」
その時ロハ先生の叫びが耳に飛び込んできた。
「リンの感情とともに魔力が放出されたんだよ。それに応える石があった。クリスタルだ! もっと魔力を出して!」
口早に説明しながらロハ先生は壁や岩の隙間に差し込まれたたいまつを消していった。
魔力を出せと言われてもリンには方法がわからなかった。誰の身にも魔力は宿っているがリンの家系はその扱い方を忘れてしまっている。父や兄たちのように魔法が使えたらといろいろ試してみたこともあったが、その努力だけは実を結ばなかった。
いや、待てよ。ひとつだけ魔力を取り出す方法があった。
「ロハ先生、光ったのはどのへんですか!」
「ほぼ中央だったよ。真ん中から少し入り口寄りの……まさか」
リンは広間の中央に立ち、剣の刃で左手のひらをきった。なにかに気づいたロハ先生の手からたいまつが落ちる。あちこちから染み出る地下水が火を弱まらせた。リンの手から血のしずくがこぼれ、黒い地面に吸い込まれていく。天井からしたたり落ちた水がくすぶる最後の火を打ち消し、あたりは闇に包まれた。
ぽあんと青い光が宇宙の真ん中に生まれた。
リンの足元でそれはろうそくの火のように頼りなく揺れて明滅している。リンは切りつけた手のひらで光に触れた。
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