236 23年分の距離を越えて③

「なに言ってるの。私たちとっくに根っこの家族じゃない。ススタケさんが本当のお父さんになってくれたら素敵だなって、思ったこともあるよ……」


 ヨワはひじの湿疹を隠してうつむいた。


「むしろ、私なんかが娘でいいのかな」

「当たり前だ!」


 たくましい両腕でヨワを抱き寄せてススタケは叫んだ。


「全部、全部やるぞ! 〇歳から今までできなかった誕生日! それに全部の入学祝いも行事も。毎日パーティーだ! 覚悟しとけヨワ」


 こみ上げる思いが大き過ぎて「うん」と返すのが精一杯だった。ススタケの腕は力強くどこまでも温かい。この温もりをずっと覚えていたくてヨワはしばし目を閉じてススタケの胸元に顔を埋めていた。


「で。俺がヨワの実父だとわかった以上、大問題があるわけだが。なあリン」


 改めてソファーに座ったススタケは表情を引き締めてリンに目を向けた。


「はい。シオサイの正体は変化の魔法使い、ジャノメ・ヴィオレフロッグです。庭番に潜り込むため植物学を大学で学んでいたシオサイに成り代わり、ヨワや俺の警戒心を解こうと実父だと偽ったと思われます」

「ヴィオレフロッグ家の者か。どおりでバナードの仲間を血眼になって探しても出てこないわけだ。目撃された仲間の正体がすべてジャノメなら、他に仲間はいないと考えていいな。それにヴィオレフロッグ家なら王族に不満を抱いているだろうし、戦後自分たちに代わって重宝されはじめたホワイトピジョン家を妬んでいてもおかしくない」

「あの、なんのお話をされているんでしょうか?」


 シトネがそう言って不安げに面々の顔色をうかがったとたん、リンが立ち上がった。


「ススタケさん、場所を変えませんか。この話は一刻も早くスオウ王とススドイ大臣のお耳に入れたいですし、騎士の各隊長にも伝達しなければなりません」

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