190 砂浜遊び③
レモンとハーブで味つけしたチキンのスライス、にんじんとキャベツと三つ葉を細かく切ってマヨネーズで和えたサラダ、ゆでた小エビ、中にはバナナとチョコソースまでそろっていた。
「お豆とひき肉の炒めものはピリ辛の味つけだけど、パプリカを入れたからユンデくんも食べられると思うわ。もしダメでもソーセージもからあげもあるからだいじょうぶよね? 追いマヨネーズしたい人はどうぞ! 小皿をみんな持って。好きなように食べてちょうだい!」
おそらく家からそのまま持ってきたと思われるマヨネーズの容器がドンッと置かれると、スサビはさっそくトルティーヤにからあげだけを包んでマヨネーズをたっぷり乗せた。
「スサビ。また肉だけ食べて。野菜も食べなさい。そのほうがおいしいわよ」
「これが一番おいしいよ」
母にたしなめられながらもペロリと食べてしまったスサビはまたからあげに手を伸ばす。その順番しか追えないかのようにマヨネーズをかけて口に運ぶ。オシャマの口振りからして彼は野菜が苦手のようだ。一度誘われた夕食の時もそうだったかなと考えたヨワは、緊張と竜鱗病のことばかり気にしてそこまで見ていなかったことに思い当たった。
「女の敵だわ」
同じくスサビの偏食ぶりを見ていたユカシイがつぶやいた。揚げ物を次々と収めるスサビの体は細く引き締まっている。まだ学生ではあるが父シジマの鍛練を受けているのか、それとも太りにくい体質なのかわからないが、油ものを気にせず口にできる彼がヨワも小憎たらしく感じた。
しかしからあげを回避してもオシャマの料理は罪だった。どれを食べても、どんな組み合わせでもおいしい。ユンデが新しい遊びを見つけたように夢中になるかたわらで、ヨワの中にも全部の具材の組み合わせを試してみたい欲求がひと口進むごとにふくれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます