187 みんなでお出かけ③
ヨワは先にオシャマとあいさつを交わしていたウララの元に歩み寄った。ぴたりと母に身を寄せているユンデは知らない人に囲まれて緊張気味のようだった。
「来てくれてありがとうございます」
「いえ。こちらこそ今日を楽しみにしていました。ねえユンデ」
ウララにうながされてユンデはちらりとヨワを見たものの、なにも言わずにうつむいた。ヨワは身をかがめて男の子に微笑みかけた。
「ユンデも来てくれてありがとう。今日はユンデとたくさん遊べたらいいな」
うつむいたままでわかりにくかったがユンデはかすかにうなずいてくれた。
北門から馬車に揺られ約二時間弱で港町に到着した。真っ直ぐ向かった砂浜は夏に比べれば寂しい風景が広がっていたが、日曜ということもあって子ども連れの家族やビーチボールなどで遊ぶ人の姿は思ったよりも多かった。
砂浜に布を敷いてそこを拠点にすることになった時もヨワの魔法は大活躍した。全員の荷物を宙に浮かべ敷布を広げて砂浜に舞い落とす。その上にそれぞれの荷物が行儀よく並んだ。ユンデは笑い声を上げておもしろがってくれた。ウララは便利ね、と感心しそれに対してオシャマが自分のことのように同意した。
近くで見ていた女の子が「あれやってー」と父にせがむ声が聞こえてきてヨワはくすくすと笑った。
まずはビーチボールをしようということになり、組分けをどうするか考えているところへユカシイが手を挙げた。
「男女で分けましょう」
「それじゃ不利にならない?」
すかさずスサビが指摘した。男女で分けるとヨワとユカシイが二、リンとスサビとユンデで三と数で不公平になるに加え筋力など身体的な差も大きかった。しかしユカシイは得意げだ。
「なにを言ってるの。こっちには浮遊の魔法使いがいるんだから負けなしよ!」
『いやそれ反則!』
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