140 希望の家族⑦

 歌い終わると、マンジがすかさず「もう一回!」と人さし指を掲げた。辟易としたシオサイは変わらず離してもらえない。

 酔っぱらいには関わりたくないのか、ロハ先生とリンは遠目に見ていた。ところがユカシイは、歓声を上げて酒くさい輪の中に飛び込んでいった。酒に強いとは聞いたが、飲んだあとも素面と同じとは確かに言っていなかった。

 止めるべきか迷うヨワの視線の先で、ユカシイはズブロクと肩を組みぴょこぽこ跳ねている。なぜかわからないが、繋がっている四人はそのまま回りはじめた。シオサイの戸惑う声だけが置いてきぼりだ。

 あれは止められない。ヨワは悟った。

 横で笑っていたススタケは、再び声を潜めてヨワの耳にささやいた。


「バナードってやつのことは兄貴たちに話して調べてもらう。ヨワ、お前も気をつけろよ」


 ススタケの緑の目を見上げてヨワは首をかしげた。


「なにが狙いか知らないがどうやら庭番に用があるみたいだからな。ヨワももう庭番の仲間。俺たち根っこの家族だろ」


 にっかりと笑ったススタケの表情と言葉を、一生忘れないだろう。全身を駆け巡った震えるほどの喜びとともに、ヨワの心に刻みつけられる。

 ふわふわと浮かれた陽気な声で響き渡る庭番の歌を、ヨワはとても気に入った。


「それならあの歌覚えなくちゃ」

「よっしゃ。俺たちも混ざるぞ!」


 ススタケの大きな手がヨワの手を包み、輪の中へ引っ張った。

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