133 止めなくてもいい涙②

 嗚咽が収まってきたヨワは涙を拭いて顔を上げた。そこにはやっぱりリンがいた。リンは苦い顔をして視線を泳がせていた。


「ロハ先生には悪いことしたな。先生がヨワをさらったやつの仲間かと思ってかなり手荒に聞き出しちまった。今、本当にゲロしててユカシイが看てる。ユカシイはロハ先生を信じてたから」


 リンは慌ててつけ足した。


「殴ったり蹴ったりはしてないからな! ロハ先生来た時から息切れしてて、そこを俺が強く揺さぶったからだと思うんだけど」


 ヨワはなんだかくすぐったくなって声を立てて笑った。リンも口元に笑みを浮かべていた。それがまたうれしくてヨワは目を細めてリンを見つめた。城を飛び出す前にたまたま目撃したことが追いかけてきた理由だろうが、クチバでもエンジでもなくリンが来てくれたことに意味を感じる。

 それが独りよがりだろうと、悲しみや寂しさはなかった。


「ありがとう、リン。助けに来てくれたんだね」


 リンはにこりと笑おうとして下を向き、照れくさそうに「勘違いだったけどな」と言った。


「もうっ、ロハ先生しっかり歩いてくださいよ。ってなにここ広い!」

「いたい! ユカシイ引きずらないで」


 そこへ天井の低い通路をくぐり抜けて、ユカシイとロハ先生が広間に現れた。ユカシイはヨワを見つけるなり飛びついて「心配したんだから!」と喚く。

 ユカシイの誤解はすでにロハ先生が解いていた。だが見たこともない空間に、リンもユカシイも忙しなく視線を走らせ興味津々だ。

 見られたからには仕方あるまい。ヨワが目を向けると、ススタケはため息をついて事情を話すことを許した。ロハ先生は庭番の仲間からにらまれていた。


「ま。騎士なら問題ないか。そっちのお嬢ちゃんも先生の生徒だしな」

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