130 不穏②
ヨワは上昇を止めてススタケに耳を傾けた。
「庭番のことはなにひとつ喋ったらダメだぞ。見聞きしたこともその存在も。友だちはもちろん親兄弟にも話すな。庭番が扱う秘密の重大さを思えばわかるだろ」
ヨワは深くうなずいた。コリコ国沈没の危機をはらんだ秘密だ。盗賊のような悪人はもちろん、混乱を招かないために国民の耳にも入れるべきではない。少なくとも今はまだその時期ではないはずだ。
両親も兄弟もいないヨワにとって容易い約束だった。ああでもユカシイに話せないのは残念だ。
「ロハ先生はいいよね?」
同じ仲間ならと考えた時ヨワは思い出した。知り合いでもうひとり庭番を知る人がいる。
「それにバナードさんも」
「いや仲間内でも外で話すのは一切ダメだ。それとバナードってヨワの恋人か? 恋人ももちろんダメだぞ」
「えっ。違うよ。バナード・ロードさんだよ。大農園のオーナーの。彼も庭番でしょ? だってここのこと話してたもの」
ススタケの顔つきが見るからに変わった。唇をぴっちりと結び目を見張って頬をかすかに震わせた。彼の表情を見た瞬間ヨワはまずいことを言ったのだと悟った。にわかに緊張と焦燥が競り合って駆け巡りこんがらがる。思考を働かせることが怖かった。だが答えはもう目の前にあった。
「それは、本当のことか……?」
ススタケがやっとのことで声を絞り出したその直後だった。上からズブロクとシオサイの悲鳴、マンジの怒鳴り声が降ってきた。とても歓迎会の騒ぎとは思えないそれにヨワとススタケはびくりと肩を震わせ上階を見上げた。
「早く! 戻るぞ!」
はしごを掴み壁を蹴って登りはじめたススタケの体をヨワは一気に練り上げた魔法で押し上げた。ススタケが上手く登りきり姿が見えなくなる。ヨワも急いでつづこうとしたが浮遊の魔法は宙を飛べても速さはない。ススタケのように勢いをつければと思ったが壁を蹴ったらはしごに激突した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます