73 シジマ家全員集合!③
「それなら助けて欲しいんですけど」
ヨワが助けを求めると、三人は兄弟らしく息を合わせて「無理」と言った。そしてヨワをひとり残して解散してしまう。ヨワが一番期待していたリンは、二階に上がっていった。
なんて薄情なやつ。
しかし、シジマの聞き役に徹していると、ありがたいことに時間は早く過ぎていった。単調な相づちをくり返している内に、疲労からうつらうつらしていたヨワは、オシャマの「ごはんだよ」という声に起こされた。
ダイニングテーブルを覗き込んでみると、そこにはにんじんのグラッセとブロッコリーが添えられたデミグラスハンバーグ、かぼちゃのスープ、トマトとたまねぎのマリネ、バターライスが並んでいた。
まるで料理店のようなでき映えに、ヨワは感嘆の声をもらす。シジマが自慢したくなるのもうなずけた。
だが、ヨワはおいしそうな料理を前にして困った。飲み物ならともかく、食事となると口布は外さなければならない。気心の知れたユカシイとロハ先生の前なら平気だが、出会ったばかりのシジマ一家に頬の湿疹を見られたくなかった。
「ヨワはここに座れよ」
ダイニングに下りてきたリンが、端のイスを引いてそう言った。彼はヨワの返事を待たず隣の席に座る。その意図を察するのは難しいことではない。リンのやさしさに感謝しながら、ヨワは端の席に着いた。
「あらあら、リンったら。ヨワちゃんを独占したいのね」
麦茶を運んできたオシャマはくすくすと笑った。
「独占欲が強い男は嫌われるぞ」
母を手伝って麦茶を配りながら、エンジがにやりと笑いかける。リンは慌てて否定したが、誰も聞く耳を持っていなかった。
「え、独占すると嫌われるのか?」
「昔と今じゃ違うんだよ、父さん」
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