72 シジマ家全員集合!②
リンからこれまでの経緯を聞いたシジマは、笑顔でヨワを歓迎してくれた。
彼の大きな手にうながされリビングに通される。茶色とオレンジ、そして白を基調とした家具と観葉植物が置かれたそこは暖かみがあった。
勧められるがままにソファーに座ったヨワだがいかんせん、まったく落ち着かない。
オシャマはさっそく夕飯の支度に取りかかり、リンは兄弟たちと話している。シジマはいったんキッチンへ行き、ヨワにレモネードを出して正面のソファーに腰かけた。
グラスを掴む手が震えていやしないか不安になる。とりあえずヨワはからからになったのどをうるおした。
ヨワはこんなにも近くでいっぺんに多数の目にさらされ、かつ逃げ場のない状況に陥ったことがなかった。しかもリン以外はほとんど初対面だ。
居場所がない。どう振る舞ったらいいのかわからない。このグラスを置いたら次にどこへ視線を向けたらいい?
竜鱗病の患部がうずく。
「うまいか?」
ヨワがグラスを置くのを見計らってシジマが言った。ヨワはすぐレモネードのことだとわかり、うなずいた。すると、シジマのメガネをかけたおおらかな顔に、パッと笑みが咲く。
「そうだろ、そうだろう。うちのかみさんはな料理上手で、作らせたらなんでもうまいんだ!」
その言葉を皮切りにシジマのお喋りは止まらなくなった。はじめて食べたオシャマの料理の思い出から、好きな料理ベスト五を語り、さらにはお菓子作り、裁縫にまで飛んでいく。
「またはじまったか」
リンの声が聞こえてヨワが振り返ると、リン、エンジ、クチバの顔がソファーの背もたれから覗いていた。
「父さんの母さん自慢は長いんだ」とエンジ。
「テキトーに相づち打っとけ。まじめに耳貸すと疲れるぞ」とクチバ。
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