66 本当の理由①
バナードとダゲンとは途中で別れ、ヨワ、ユカシイ、リン、ロハ先生は四日ぶりにコリコの城下町へと帰ってきた。盗賊の一件があったものの体は楽しい思い出と充足した疲労に満たされている。
南門で解散となりユカシイは家に帰り、ロハ先生は中央図書館へ寄ると言った。どうしても今すぐ巨樹についての資料を集めたくて仕方ないそうだ。ヨワは呆れながらもロハ先生の大きなリュックを引き受けた。こんなものを背負って図書館に行ったらロハ先生が振り返る度に棚から本が落ちてくる。
身軽になった先生はヨワに礼を言って抑えきれない気持ちのままに駆け足で去っていった。きっと明日には思考も体もエネルギー切れで停止しているだろう。研究に夢中なロハ先生をリンは笑った。
ヨワは自分の分とリンとロハ先生の荷物を魔法で浮かべて、リンの笑顔を横目に見つつ帰路に着いた。先生の目がなくなったのでヨワは戯れに三つのリュックをお手玉のように宙で転がした。その時ふと強烈な違和感がヨワを襲った。思わず立ち止まる。なにが違うのかはっきりとわからないまま心臓は焦燥にドクドクと走っていた。
「ヨワ? 疲れたか」
心配げなリンの顔を見ると気持ちが少し収まっていく。ヨワは「だいじょうぶ」と返して違和感の正体を考えながら歩き出した。
「にゃお。にゃお」
西区フラーメン大学の鉱物学研究室に近づくとどこからともなくかわいらしい鳴き声が響いてきた。ヨワとリンが研究室に入ると、ヨワが寝床にしている資料室の扉をカリカリと引っ掻いているネコがいた。夜明け色の長毛にどんな埃でもひとなでで絡め取りそうなふわふわのしっぽ、そして黒いベルベットの首輪。
「あれ。お前また来たのか」
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