6 早朝の訪問者③
「他人事みたいに! 先輩は私の魔法の練習につき合うって約束したんですからね」
「わかってるよ。でも今回みたいな雰囲気作りは人によっては逆効果になっちゃうかもね」
ヨワは立ち上がり扉に向かった。こんな早朝に訪ねてくる者はまずいない。ユカシイの魅了の魔法にあてられた鳥だろう。そう思って開いた扉の向こうには騎士がふたり立っていた。
「早朝に申し訳ない。浮遊の魔法使いヨワという女性の住まいはこちらか?」
「ひいっ!」
ヨワは驚いて扉を思いきり閉めた。慌ててローブを拾い部屋の奥へ逃げる。
「なに。どうしたんですか」
「き、騎士がふたり。お願い、出てユカシイ」
ユカシイはレモン色の髪を掻き上げて扉に向かった。後輩がパジャマで待機していなかったことに感謝する。ヨワはすばやくフードをかぶり口布をあて騎士相手に堂々と対応するユカシイの背中に張りつき会話に入った。
「王がお呼びです。今すぐ登城を願いたい」
思ってもみない用件にヨワとユカシイは顔を見合わせた。
ヨワはたくましい騎士の背について早起きな鳥たちの声飛び交う根っこ道を城に向かって歩いた。城に行く機会など滅多にないことだと言ってユカシイもついてきた。最後尾を小柄な騎士が歩いていた。
城に呼ばれる理由を、ましてや王が直々に自分を呼びつける心当たりはまったく思いつかない。とにかく城に行ってみるしかない。
スオウ・マロンヘッジホッグ王が統べるコリコ国は、カカペト山からの湧き水でできた湖の上に位置していた。その湖には天にも届く巨樹コリコが根を張り巡らせており、コリコの民は巨樹の根に抱かれて生活している。そして王が住まう城は巨樹の大きく左右に張り出した幹の股に座していた。
「王子様にも会えるかしら。ねえ先輩」
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