雨#2
ピート
side a
幼馴染の雅と一緒に遊ばなくなったのは、いつからなんだろう?
どんどん女らしくなっていく雅を避けるようにしていたのは、そもそも俺の方なんだけど……。
年々可愛く女性らしくなっていく雅、話してるだけで周りに茶化されるのが嫌だった。ガキなんだよな……今でもだけど。
放課後、図書室で待っててくれるように頼んだけど、どう話そう?やっぱり携帯にメール打つべきだったかなぁ。
友人に頼んで手に入れてもらったチケットを見つめる……呼び出せたんだ、きっと話せるよな……大丈夫だ!頑張れ、俺!とはいうものの深いため息がこぼれおちた。
部活を終えると、急いでシャワーを浴びる。
雅の方は練習終わったかな?待たせない様にしないとな。着替えを済ますと、急いで図書室に向かう。
窓の外の空は、今にも降り出しそうな気配だ。雨が降り出したら、一つの傘で帰れるかな?雅がカサ持ってないわけないか。想像を振り払うと図書室の扉を開いた。
雅は……いた!
奥の席で本を読んでる姿が見える。
「雅、待たせてゴメン」正面の席に腰を下ろすと頭を下げた。
「私もさっき来たトコだよ。で、話って何?」
「あ、あぁ、あのな……」
ゴロゴロゴロゴロゴロ ドドーン!!!!
話かけようとした瞬間、雷鳴が鳴り響いた。窓の外は激しい雨が降り出している。
「もう、傘持ってきてないのに、孝紀、傘有る?」
「持ってるよ」一緒に帰れるのか?
「じゃ、送ってくれない?近所なんだしさ」
「仕方ねぇな、送ってやるよ」神様サンキュー!!普段は困った時ぐらいしか思い出しもしない神様に礼を言うと、雅の気が変わらないうちに立ち上がった。
相合傘だよ。どうしようねぇ、コレ?……頬が勝手に緩んでいくのがわかる。
「ねぇ、話ってなんだったの?」肩が触れるか触れないかの距離に雅がいる。
「話?あぁ、高校どこにすんのかなって思ったからさ」
「進路の事だったの?」
「そうだよ。近所だしさ、もし同じ高校、受験するなら、勉強とか一緒にできるかなって思ったんだよ」そうじゃなくて、チケットだよ。でもソレもいいかもしれないな・・・。
「勉強会?私が教えるだけじゃないの?」
「今、バカにしたろ?」
「事実だと思うんだけど?」
「そんな事ないさ、俺が本気で勉強したら、ビックリするような結果がでるぞ」
「そんな事ないから大丈夫よ」
「そんな事って?」
「本気で勉強するなんて事よ。想像もできないわ」明らかにバカにした微笑みだ。
「クソッ、驚かせてやる!」こんな風に話すの何年ぶりだろう……チェッ、もう着いちゃったよ・・・。
「ありがとう。孝紀はどこ受験するつもりなの?」
「西高だよ、近いしな、あのぐらいじゃないと厳しい」苦笑いが浮かぶ。
「私もだよ。近いしね、あそこ」
「じゃあ、勉強会しようぜ」それもいいけど、チケットだよ、チケット。
「真面目にやるっていうなら、考えてもいいわよ」
「次の試験の結果で驚かしてやるからな。ほら、早く家に入れよ、風邪ひくとマズイからな。さっさと着替えろよ!じゃあ、また明日な」
結局、誘えなかったなぁ。なんてダメなんだ俺は……はぁ……随分濡れたし、シャワー浴びてこよ。
その後、電話するぞ。携帯を充電器に差すと部屋を後にした。
Fin
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