宿屋マリリン亭の日常

天地海

プロローグ

プロローグ

 結局のところ、人の営みってものはどこにいても変わらない。

 生きるために食べるし、水を飲む。

 そして、朝になれば太陽は昇り、夕方には沈む。

 夜には星が輝き、月は満ち欠ける。


 この世界に生きている限り、みんな同じだ。

 王様だろうが、お姫様だろうが、魔法使いだろうが、騎士だろうが、役人だろうが、コックだろうが、ウェイトレスだろうが。

 ……もちろん、地図にさえ名前の載らない、小さな集落出身の彼女――サラ=キャリーネにとっても。


 宿屋の階段の踊り場には振り子の柱時計が置かれている。

 それが六時を指すと同時に、サラは目を覚ました。

 目覚まし時計を部屋に置いているわけでもないのに、この二年間その時間に起きることが日課だったので、それはもう正確に起きられるようになったのだ。

 サラは宿場町の小さな宿屋――マリリン亭のルームメイドだった。

 厳密にはルームメイド兼ウェイトレスであり、宿屋も酒場との兼業である。

 とにかく、サラの一日はこうして始まる――。


「さぁて、今日も一日がんばんねーと」

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