ガンダムを見る彼女

春嵐

01

 彼女は、アニメを見ている。ガンダム、というらしい。


 テレビの前に陣取って、アニメを見てる。座布団に体育座りして。

 ちょっと画面に近かったので、座布団ごと少し後ろに退げた。テレビを見るときは画面から離れて部屋を明るくしなさい。


「いぇぁう」


 よく分からない声を出しながら、彼女はテレビを見てる。


「そろそろ仕事だから、行くね?」


「いぇぁう」


 よく分からない声で返事された。

 テレビ画面。よく分からないイケメンが、よく分からないハサミみたいな武器でぺちゃんこにされていた。


 何が面白いんだか、いまいちよく分からない。


 仕事に行って、帰ってきても。


 彼女は、同じ体勢でテレビを見ていた。部屋が暗いので、灯りをつける。そして、やっぱり画面にちょっと近くなっている彼女の座布団を、後ろに引きずる。


「ただいま」


「おかえり」


 画面。


 なんかよく分からない壮大な音楽と共に、一本角のよく分からない白いなにかが炎の中を歩き出した。


「おおおおぉ、おおおおおぉお」


 なんか彼女唄い出した。


 冷蔵庫の中身を確認する。朝に作り置きしておいたご飯がなくなっているのを確認して、彼女がお昼ごはんをちゃんと食べたのだと認識する。


 夜ごはん、作るか。


「わたしのたったひとつの望み」


 彼女。何か呟いている。


「カレーがたべたい」


「カレーね」


 彼女の望み通り、カレーにするか。

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